夢の中のような1 ページ26
．
そっと、誰かが手を掴んでくれた。
両手で包み込む温もりは大きくて、震えていて、今にも泣きそうな雰囲気ですら感じる。
視界が定まらないせいか顔がよく見ない。
この手を握ってくれているのは誰なのか。分からないけど、ひどく心が休まるのはきっと彼だからだろう。
その名を声にしようとするが、空気が抜けるだけで言葉にならなかった。それでもいい、と風宮は口を小さく動かした。
――……ひ、なた、く……
．
酷い頭痛で風宮は意識を取り戻した。
開眼すれば、真っ白な天井が映りこみ、視界の端にはパイプ椅子に座っている……
「ん、目が覚めたか」
同じクラスの松田夜助が、足を組ながら読んでいた愛読の漫画本を閉じる。頭がついていけなかった。いつも自分の研究所に籠っている彼が、どうしてこんな所に。
そもそもここは何処なのか、目を動かして見ても全てが白に包まれていて、吐き気すらしてくる。
「その顔は何も覚えて無いようだな」
「……何が、あったんだっけ」
思い出そうと遡るが、何をしようとしてこうなったのか、前後の記憶がくり貫かれたように思い出せない。
松田が面倒くさそうに話してくれた。
「ここは学内の病院だ。予備学科生に突き飛ばされ、お前は頭に５針縫うほどの怪我をして、CT検査したら中度の脳震盪を起こしていたんだよ」
風宮は話を聞きながら、ぼんやりと天井を見つめる。
他所より学園内の病院の方が完璧に治してくれるだろうし、今回の事故が公になったら希望ヶ峰の品質も下がってしまうのは明白で……と、自分の事なのに他人事に考えてしまっていた。
「俺も詳しく知らないが、一人の予備学科生がお前を運んで来たらしいな」
物音がない空間に舌打ちが響く。
「無闇に体を動かさないで救急車を呼ぶのが最善なのに、クソど素人が……勝手なことしやがって」
超高校級の神経学者を持っている松田にすれば、腹立たしいことかもしれない。医療の知識を持っていない人間が助けようと思ってしたことが、かえって負傷者に危険を晒してしまう可能性は０ではないのだから。
風宮はゆっくりと瞼をおろした。
「体調はどうだ？」
「……頭が、痛い……吐き気も、少し」
「だろうな。俺が診たとき血塗れだったし」
「………そう」
「記憶喪失は一時的なものだが、その頭痛は長引くかもしれない。２週間は安静にしろよ。死にたくなければ」
薄目を開けば、普段のだらしない面影がない。
真剣な顔立ちで、松田は風宮を見ていた。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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