物理的法則 ページ20
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学園内は今日も騒がしい。
不規則な鈍い衝撃音と揺れのせいで、夢中になって読んでいた山積みの本が、何冊かデスクから落ちる。
中身まで規格違いな超高校級の彼らが一際目立つのは、なんと言っても77期生の1-Bクラスで、先輩である流流歌からは「調和性無さすぎ」と前に鼻で笑われたほどだ。
そんなトラブルメーカーであるクラスから、図書室の中で距離を置いている自分の手には、細く小さなナイフが握らせられている。
「……あの、これは」
授けた本人である十六夜に問えば、素っ気ない返事が返ってきた。
「気に入らないか？」
「……そこまで仲良かったでしたっけ」
一人でこんな所に来るのが意外だったとしても、自慢の武器の一つであろう、装飾施されたダガーナイフをいきなりくれるのは予想していなかった。
「悪いことを言う。流流歌が可愛いがる後輩に、俺が人目を引いていないとでも？」
「……はあ、そうなんですか」
「……それに」
涼しい顔で風宮に向けて同じダガーナイフを投げてきた。
えっ と口に出そうになったのを呑み込むと、顔の横を通って真後ろの本に刺さった。白い髪が数本切れて。
「切れ味投げ味はお墨付きだ」
固まって数秒して、風宮は後ろの方に振り返る。
切れ味が良すぎて、積み立てられた本の一部が深々と傷つけられていた。
物はいつか壊れるものだから仕方ないにしろ、これではあんまりすぎる……。
「今のを驚かないのか……やるな」
十六夜の赤い目が僅かに見開けた。
背中越しに視線を感じながら、風宮は突き刺さったダガーを抜いて、傷口のように裂けた本に指を滑らせ、静かに振り向く。
「流流歌さんはどうしたんですか？」
用事はこれだけじゃないはず。
十六夜が彼女と離れるのはあまり好まない事だろうが、だからこそ恋人の頼み事は叶えたくなるものに違いない。
「……お前にお茶を淹れてほしいと、おいちいお菓子作って先に待ってる」
伝える為だけに、ダガーをプレゼントし大切な本を壊されたのか。
普段あまり話さない彼だが、やはり超高校級。武器を手にすると鋭さと警戒を際立たせて刃のよう。無口と思ってたら間違いだ、物理的にものを言わせるタイプだった。
「いつも貰ってばかりだから、お茶で良いならいくらでも淹れますよ」
彼は目を伏せ フッ と笑うと、先に部屋を後にする。
自分の手には似つかわしくない物が納まっているが、流石は鍛冶屋。とても綺麗だ。
「……あの人なりに接してくれてると、解釈していいのかな」
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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