君に笑顔の作り方を3 ページ19
．
「夢中になれないから、その習い事に好きな所がなかったから断念した……違う？」
「それは……！」
違うと言えなかった。
……自分には向いていなかったと理由をつけて、次々と不向きな習い事に手を着けていたのは事実だから。
風宮がこちらに体を向け、日向を見上げた。
「……彼女は、こう言いたかったんだと思うよ」
紡がれる言葉に耳を傾ける。
「何色にも染まっていない真っ白な君だからこそ、自分がなりたいものを描けることが出来る。音楽が好きなら、料理が好きなら、野球が好きなら、ゲームが好きなら、君はその色に染まることが出来る……例えるなら絵と同じ」
日向の目が見開く。
「……だから君は自由で、何にでもなれて、何処にでも行ける可能性を持っているんだよ」
彼女の声音はまるで諭すようだった。
七海が言いたかったこと。あの時言われてピンと来なかった事が、それが今、風宮に言われてやっと気付いた気がする。
きっと七海も同じことを言いたかったんだろうな。と、胸の内で呟いて目を細めれば、自然と日向の頬が緩んでしまっていた。
「……何笑ってるの？」
「いや……お前と七海、似てるなって」
その フワフワ と雲のように掴めない雰囲気と、こんな予備学科何かに話し込む人なんてそういないはず。
「……似てないよ、あんなキラキラと輝いてないし」
あんな、という言葉つきから知り合いみたいだ。
本科生同士だから顔合わせしても可笑しくないか。さっきもあのクラスかと呟いていたし。と、解釈していれば、風宮は顔を伏せながら本の表紙に手を滑らせていた。
「……一つ、助言してもいい？」
「？ああ」
「貴方はどんな色にも染まれるけど、黒はやめた方がいいよ。……グレーもそう」
日向は苦笑した。
「なんだよ、俺は犯罪なんてしないぞ？」
「……そうだね」
俯いたままなにか考え込んでいる。
それでも1ヶ月以上彼女と過ごしていると、何となく感じるものがある。例えば、風宮は表情が無いだけで、感情はちゃんと持っている事とか。
今は多分、憂いてる。
「風宮」
日向は両手で風宮の顔を持ち上げ、その色白の頬をマッサージするように摘まみ始めた。
「……なっ、なに？」
「お前、笑った方が似合うと思うぞ」
手本として笑うと、風宮は微かに目を見開いた。
「……え」
「次会う時、俺と練習してみようか？」
君に笑顔の作り方を。
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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