君に笑顔の作り方を2 ページ18
．
「……それにしても、うん。どこか吹っ切れた顔をしてる。何かあったの？」
本当に洞察力が優れていると言うか、心を見透かされているような気がして心臓に悪い。
「風宮以外の本科生に会っただけだよ。七海千秋って子なんだけど、俺の方が自由で、何処にでも行けて何にでもなれるって言われたんだ。……なあ、お前はどう思う？」
どことなく七海と風宮が似ていたから、訊ねてみた。
すると自分の世界に入るかのように、口元を本で隠す仕草をして黙りこんでしまった。時折「……あのクラスか」と思い出すような口振りで呟く彼女の声は、うんざりしたように聞こえたのだが、知らぬ間に何かあったのだろうか。
程無くして風宮は整理がついたようで、一つ頷いて、本を持ってる方の手でベンチを差した。
「じゃあ今回は、それをテーマに話そうか」
日向より先に腰をおろすと、本を開き始めた。
まさか本を読みながら進めるのかと考えながら、風宮の隣に座って、視線を映す。
「……ねえ、貴方の夢は何？」
「夢？」
こちらに流し目を送る紫の目は、今日もガラス玉のように光の反射で輝いている。
その持ち主は相変わらず表情が無くて、何を考えているのか分からないけど、彼女と過ごす一時はどの教科書よりも興味深いものばかりだ。
「俺の夢は勿論、才能を手に入れて憧れの希望ヶ峰学園に入学することだ」
「……。聞きたいのはそこじゃなくて」
本に目線を落とし パラパラ と何度も捲り始めた。
「具体的に、どんな自分になりたいの？」
「どんな、って？」
「……本科に入るためには、何か分野で超一流にならなければならない。なら貴方は、何の才能を手に入れて入学したいの？」
そこまで言われて、日向は何も言えなくなり顔を逸らす。
「……その様子じゃ、七海って子が言った意味もよく分かっていない感じか」
少しだけ ムッ とした。
だから風宮から聞きたいのに、一人だけ先に理解されても困る。日向の胸が締め付けるように痛む。
ちらつく自分の過去をゆっくりと言葉に繋げた。
「小さい時、色んな習い事はしたよ……まあ、どれも人並みに終わって断念したけど。……他の奴はすぐに才能が開化してさ、それを端で見ていたっけな」
「……悔しい反面、まあいっかって思った」
「……えっ」
風宮の方を見ると同時に、読むのかと思っていた本を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ダンガンロンパ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
