ハイテンションガール ページ15
．
焦げくさい臭いが廊下に漂う。
物を燃やしたような臭いではなく、肉の脂を焦がしたような香ばしさで、終里は涎を垂らしながら我先にと音楽室の引き戸を開けて中に入っていく。
次々と入っていく同期生達の背中を見ながら、その匂いのせいでより空腹を覚えてしまった腹を無意識に押さえながら自分も入り込む。
次の瞬間、なんとも言えない旋律を耳にして、その動きのまま固まってしまった。
「ホルモン！ホルモンホルモンホルモン！！」
カーテンで閉めきられた部屋の一角で、ギターを携えて歌う女がいた。彼女が、澪田唯吹のようだ。
超高校級の軽音楽部という才能を持つ澪田の声はしかし、誰もが魅了されるものとは程遠く、まるで悪魔が唸り声をあげるような声だった。
一度聞いたら何日も引きずりそうなその声は、西園寺と終里以外すでに相当なダメージを食らっていた。
終いにはギターを持ち構えて先端に着いているバーナーで、澪田は目の前にあるバーベキューコンロで焼いているホルモンに向かって、叫びながら放射する。
……結論からして、なにがしたいのかわからない。
「あら？いつの間にかオーディオンすか？」
「なにやってんだよ……」
風宮の言葉を汲み取るかのようにやつれた声で左右田が聞くと、澪田は舌を出しながら親指を立てた。
「ノーミュージック！」
「ノーホルモン！」
「いや、カッコよく決められてもね」
京助命と書かれた青いギターを構えながら意気投合している雪染と澪田。突っ込みをいれる左右田の声を他所に、終里は一人、すごい早さでホルモンを食べていた。
風宮は ふう…… と息を吐く。
青ざめる人。涙目の人。喜んでる人と、ただ生徒を集めるだけなのに、カオス過ぎてさっさと去りたい。
「あれれ？よく見たら、ちっこ可愛い女の子がいるじゃないっすか！」
近づくなり、澪田はギターをほっぽって挨拶し始める。
「こんにちらー！澪田唯吹だよー！友好を深めるのにどうっすか、ホルモンを摘まんでクイッといくのは！？」
お酒を飲む仕草をして ケラケラ と笑う澪田のテンションに、ついていけない。
「……臓器食べられないから」
「その表現止めろ！ホルモン食べられなくなるだろ！？」
「たっはー！今日も和一ちゃんのツッコミはキレッキレすね！」
澪田の勢いで周りが自分の存在を薄まっていくのを見境って音楽室から出ると、風宮は振り返らず走った。
「……あれ、風宮さん？」
沈黙。
「「「ああっ逃げた――！！？」」」
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初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
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