本に興味ない貴女へ2 ページ14
．
「ひぃ、す、すみませぇん……！」
「なんで罪木が謝ってんだよ……」
「なんだぁ？腹へってイライラしてんのか？」
「いや違うだろ！」
この場の状況がわかっていない終里に、左右田が突っ込む。
「それで？」
数秒かけて投げ掛けた。
西園寺が明らかに不平な顔を浮かべている。
着物の裾が震えていた。自分の方に歩み寄るなり言い放った。
「たかが本を読むだけの才能なら、別にお前じゃなくても良くない？お前みたいな引きこもりの代わりなんて、その辺にすぐ見つかるだろうしさ！！」
「西園寺さん！」
「お前さん、それは言い過ぎじゃあ！」
すかさず雪染と弐大が注意するも、悪びれた様子もなく口笛を吹く。
「……たかが？」
誰かが「ひっ」と怯える声を溢した。
周りと比べれば、大したことはないと自負している。趣味が読書という感覚でしかないから、それが君の才能だと言われた時もやりきれないと思ったこともあった。
けれど“たかが”の一言で片付けられるほど、超高校級は腐ってはいない。
「そう思うなら、これ読んでみなよ」
風宮の右手に一冊の本が握られている。
「え？今どっから本を出した！？」
「シャラップ！」
「はい、静かにしてますソニアさん！」
「……ほら」
「えっ」
言い返してくると思ったのか。それとも感情を露にするとでも思ったのか。色のない表情で風宮が本を差し出すと、西園寺は目を丸くした。
しばらく疑うような視線を送っていたが、渋々その本を受け取るなり、表紙を捲って立ち読みし始める。
すると不思議と皆黙りこんだ。緊張で顔が引き締まる雪染達に、ページを捲る音だけが耳に残った。
「……これ」
５分くらいしただろうか。
軽く最初と中間を目に通していた西園寺の声は、上擦って聞こえた。
「なんでこんなに身に染みるの？この本、わたし好みだよぉ！」
本から顔を上げるなり、あどけない笑顔を振り撒ける。
それを聞いて、肩の重みが取り除かれたように雪染達は安堵した。
「……そう。ならあげるよ」
「い、いいの！？」
「うん」
嬉しそうにしかし何か思い出した顔で、西園寺は風宮から視線を落とした。
「……あの、さっきはごめんなさい……言い過ぎたと思う」
「気にしてないよ」
瞬間、勢い良く抱きつかれた。
「風宮おねぇ好き！！」
「代わり映え早すぎるだろ」
「ねえ風宮さん、なんの本をあげたの？」
雪染に聞かれて、簡潔に答えた。
「恵まれなかった主人公が色んな手を使って、周りを蹴落す話」
「えっ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ダンガンロンパ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
初火(プロフ) - ゆきさん» 今まで才能に振り回されていたのが無くなったことで、自分なら、自分の方がその男より大切にすることも愛すことも出来る、と考えて、あんな風になりました。 (2016年10月17日 19時) (
レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - ゆきさん» はい、狛枝からですね。狛枝にとって、絶対的な希望の才能を持っている彼女を悲しませる相手が許せなかったんです。絶望的な状況を希望に変えてしまうのが奇跡……と考えている彼は、彼女と一緒にいる間不運が来ないことで、欲が湧いたんですね。 (2016年10月17日 19時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 狛枝とキスしたんですか？ (2016年10月17日 17時) (レス) id: ab6fb12fda (このIDを非表示/違反報告)
初火(プロフ) - M2さん» コメントありがとうございます！嬉しすぎて、更新張り切っちゃいそうです！ (2016年10月12日 17時) (レス) id: 4a3cd1d519 (このIDを非表示/違反報告)
M2 - とてもおもしろいです！いつも更新、楽しみにしてます！ (2016年10月12日 15時) (レス) id: 2e35ec2a38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
