55 ページ8
「智くん!」
「あっ!しょうくん、おかえりー!」
勢いよくドアを開けた俺の声に、いつもみたいに玄関で座って待っていた智くんがパッと顔を上げた。
「今日はとっても早くお仕事終わったんだね」
これまた恒例になってる「おかえり」のムギューをしながら、いつもの8割増しな嬉しそうな顔。
特にこれと言って変わったところはなさそうだけど......。
「ねぇ智くん。今日、知らない女の人が来なかった?」
「うん、きたよ。しょうくんのおともだち」
何も分かっていない智くんは大好きなココアが飲めて上機嫌だけど、俺は内心ソワソワしっぱなしで心臓バクバクだ。
「その人に、何か言われた......?」
「えっとね、しょうくんのこと好き?ってきかれた」
「だから、すっごくやさしいからだいすきって答えたよ」
どこか自慢げなその表情と、「だいすき」だなんて可愛い言葉、本当なら力いっぱい抱きしめてフワッフワの髪撫でまわして、俺も大好きだよ〜なんて言いたいところだけど。
「話したことはそれだけ?」
「うん。それだけ。あっ、かえる時に『またくるね』っていってた」
「また?またここに来るって言ったの?その人」
「うん、いってたよ。またおはなししようねって......どうしたのしょうくん?そんなに怖いかおしないで?」
あいつ、ほんとに何を考えてんだ......?
別に俺の悪口を並べ挙げて、変なことを吹き込んでるわけでもなさそうだし、まじで意味が分からない。
でも、また来るって言ってた以上また近いうちにここに来るに違いない。
あぁ、なんでこんな面倒なことになったんだろう。もう2度と顔も見ないだろうって思ってたのに。今更になってこんな、やっと楽しく暮らせてた時に――
「いい?智くん。またあの女の人が来ても、絶対家に入れちゃダメだよ。お話ししちゃダメ。あの人は俺の友達なんかじゃないんだ。難しい話だから説明は出来ないけど、怖い人だからもう会っちゃダメだよ」
「......ぼく、わるいことしちゃった......?」
俺の『怖い人』って言葉にすっかり怯えて泣きそうになってるあたり、効果は絶大だな。もうアイツと会おうとすることもなさそうだ。
「ううん。智くんは悪くないよ、大丈夫。もう分かったよね、会っちゃダメだからね」
黙ってコクコク頷く可愛い人を宥めながら、氷が溶けて薄くなったココアを作り直した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 645人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あっちゃん(プロフ) - お久しぶりです。1年ぶりでしたか。←自分自身もあわただしくしてしたのでそんなに気にならなかったですよ。また更新してくださるのをお待ちしてます。 (2021年1月14日 15時) (
レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
あつこ(プロフ) - 更新ありがとうございます。ほっぺ大福さんのペースでゆっくり更新してくださいね♪ゆっくりお待ちしてます♪ (2021年1月14日 1時) (レス) id: c34a7bdbe3 (このIDを非表示/違反報告)
よこ□(プロフ) - はじめまして！ほっぺ大福さんの書かれる小説大好きです。お体の優れないなか更新して下さりありがとうございます。また、お話しして下さりありがとうございます。いつまででも待ってますので(´；ω；`)お体を第一に。無理なさらずにして下さい。応援しています。 (2019年7月13日 0時) (レス) id: 86e0ea9385 (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - はじめまして。体調の優れないなかでの更新ありがとうございます。無理なさらないでくださいね。いつまでも気長に待ちますので… 。お元気になられることをお祈りしています。 (2019年7月12日 15時) (レス) id: cd7b6e55f7 (このIDを非表示/違反報告)
sayaka3104(プロフ) - はじめまして。体調が優れない中更新ありがとうございます。作品ごと消えてしまうなんて悲しいこと言わないで！どんなに間が空いても気長に待ってます。体調見ながらでいいですのでお願いします。お大事してください。 (2019年7月12日 10時) (レス) id: 72dafea14d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほっぺ大福 | 作成日時：2018年6月27日 0時
