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隣に腰かけた俺を見て、Aさんはなにも言わなかった。ただ見ないでと言うように顔を背け、小刻みに肩を震わせている。泣いているなんて、誰が見ても一目瞭然だろう。
「なんで、泣いてるんですか」
「……お前には関係ない」
「関係なくないですよ。俺、これでも一応、貴方の後輩ですし」
「うるさい、さっさと帰れよ」
「嫌です。話してくれるまで、帰りません」
こんな状態のAさんを残して「スマホを回収する目的は達成したしさっさと帰ろう」とは、到底なれなかった。彼の言葉に「はい分かりました」と頷くことも、同様に。
頑なにその場を離れようとしない俺を彼は透明な膜が張られた瞳で精一杯睨み付けてくるが、涙の影響もあってそこまで怖くない。普段はただそこに居るだけで感じる威圧感も今だけは全く感じることがなく、一切動揺せずに俺は彼の双眸を見つめ返した。
目が合う度に動揺していた俺が今日だけは威勢良く見つめ返してくるからか、いつもとは真逆に、彼の方が僅かにたじろぐ。その姿に「あ、可愛い」と思ってしまった俺は後で殴っておこう。
「話くらいなら、俺でも聞けますから。そりゃ、普段はポンコツなんで信用出来ないと思いますけど……でも、」
「……どうせ……お前も……」
「え？」
「っどうせ、お前だって……！結局こんな俺を笑うんだろっ！俺のことを、【女の成り損ない】だってッ……俺が、俺が何回その言葉に裏切られたと思って……ッ！」
勢い良く立ち上がった衝撃か、ガタリと椅子の揺れる音が静かな部屋に響き渡り、床に倒れた椅子の車輪がカラカラと空回る。
これには流石に俺も驚いて、突然の大きな音と彼の気迫に肩を跳ねさせると、直ぐ様ハッとしたように目を見開いた彼と目が合った。
その瞳はやってしまったと言わんばかりに不安げな色を灯し始めて、明かりの影響かもしれないけれど、不安げな色と共にガラス玉のようなそれはゆらゆらと揺らめいていた。
もしかしたら、第三者から見て俺のこの認識は【遅すぎ】なのかもしれない。
本当だったらもっと早く、それこそ彼が【自分はトランスジェンダーだ】と俺達に公表した、まさにその瞬間に悟るべきことだったのかもしれない。
―――彼の周りに居る人間の認識が、この場所のように全てが全て、甘いものではないことを。
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白菜(プロフ) - 名無しさん» まであります。好きってだけではどうしようもないもどかしさや、好きだからこそ想いに蓋をする切なさのようなものを描けていたら良いなと思います。名無しさんを喜ばせることが出来て本当に良かったです！長文大好き人間なので、どうか気にせず是非また送ってください！ (2020年11月12日 22時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます！図々しいと思い、結局説明文には書かなかったのですが、今回のお話は私の中での理解を深める意味と、もっと多くの人の恋愛の価値観を広げたいと思って執筆しました。誰かにこうして届けることが出来ただけで、私としては全てやりきった感 (2020年11月12日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - りんごあめさん» お褒め頂きありがとうございます！デリケートなジャンルの更にデリケートな部分を攻めたお話なので私自身もビクビクしながら上げる決意をしましたが、そう言っていただけて良かったです！ゆっくりにはなりますが更新頑張ります！ (2020年11月12日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 長々と乱文を失礼致しました。もしここまで読んでくださったのなら、本当にありがとうございます。あなたの文章が、世界が、大好きです。白菜さんの今と未来に、幸せがあり続けますように。 (2020年11月11日 20時) (レス) id: 4c7b111d07 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - それから、お分かりだとは思うのですが、これはあくまで1ファンの、マイノリティとして生を受けた者の1人の感想であり、当然LGBTs全員の総意ではありません。ただ私が嬉しかったってだけの話なんです。 (2020年11月11日 20時) (レス) id: 4c7b111d07 (このIDを非表示/違反報告)
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