空白が四十五。 ページ46
国木田の声を遮った声は何処か哀しそうで、哀愁漂う切なさが含まれていた。
「Aちゃんにとって、あんな苦しいこと、本当は無くてもよかったんだ。
それに僕は孤児院でAちゃんの優しさに助けて貰ってたのに、都合のいいことばかり覚えて、大切なことは忘れてた」
誰が何を云う訳でもなく、探偵社が静寂に包まれた。
何処と無く気まずくなった社内の空気を破ったのは、太宰だ。
「敦君」
敦がゆっくりと顔を上げる。
「苦しかったかどうかは、敦君が推し量っていいものじゃない。
本人にしか判らない事だからね。それに、人間は都合の悪いことは忘れてしまう生き物なのだよ」
「なら、どうすれば__」
「さあ?私はAちゃんじゃないからねえ」
太宰は小さく笑って、敦の肩に手を乗せ探偵社を出ていった。
そしてまた、静寂が戻る。
「...待て太宰!!貴様何処へ行く!雰囲気に任せてサボりに行くな!」
国木田が太宰に続き怒声を発しながら退場。呆然とそれを見ていた敦の所へ、足音が届いた。
「...Aちゃん」
「なに?」
「手、出して」
首を傾げながら云われた通り右手を出した。敦はその手に小さなものを握らせる。
握られた自分の右手を見て、次に敦を見る。
そしてまた目線は手に戻り、ゆっくりと手を開いた。
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年9月8日 13時