回向(其の壱) ページ30
「…そんな、何かの間違いじゃ」
「それがね、谷崎君が云うには、辞表の中身の字は完全にAのものだったらしいのだよ」
困り顔で太宰が淡々と述べた。
信じられなかった。信じたくなかった。
あれだけ探偵社を信頼して、入ったばかりの敦に優しくしてくれた。孤児院の院長が死んだ時も、寄り添ってくれた。
そんなAが…
だが今は、それよりもやらなければならない事がある。
決意して直ぐ、
「あ、置いてかれた」
と太宰があっさりと云うのが聞こえた。直ぐに足を虎化させて追いつく。
少し進むと、監視装置が見えた。敦が焦って芥川を止める。
…止めた時に触れた指を落とされそうになったが。
「映れば侵入がばれる」
「…ふん、では迂回路を…」
云う途中、遠くから二人の話し声が微かに聞こえた。
巡回警備の声だ。前は監視装置、後ろは巡回警備。
挟まれ、考えている内に芥川は巡回警備のいる方へ進んで行った。
躊躇なく羅生門で二人の警備を掴み、
「許可無く声を発せば殺す
抗命の気配を感じれば殺す
善いな」
と脅した。警備の二人は完全に怯え、コクコクと頷くだけだ。
「貴様等の雇用主の居所は?」
聞き出そうとしたその時、警備二人に絡み付いていた羅生門が解けると同時に芥川の体が吹っ飛んだ。
「芥川!?」
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年6月16日 10時