【呪術廻戦】もう戻らない青い春【五条悟成り代わり】

episode19 ページ20

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彼女は黙ったまま聞いている。
　
　
　
　
「君が好きだよ」
　
　
　
　
彼はこれで最期だと、彼女の顔を見上げた。

その顔が、自分の思っていた予想と違ったものだから、驚いてしまった。


彼女は、泣くのを堪えるような、辛そうな顔をしていたから。

まるで、あの日、彼が離反した後に再開した、新宿での忘れられない出来事の。




「馬鹿だよ、ほんと。傑の馬鹿、あほ」




ああ、同じことを言っていたな、と思い出す。

思ったよりも鮮明にあの日のことを頭の中に描けたのは、死ぬ前だからだろうか。




「傑、ありがとう。私の為に怒ってくれて」




少しだけ口角を上げて微笑む彼女がそう言う。




「＿＿A」
　
　
「もう言い残したことは？」
　
　
「うん、もう何も言うことはない」
　
　
　
　
彼女はそれを聞いて、分かったと頷いた。

これで終わりだと二人共悟る。

彼がAの呪術に終わる前、彼女の顔が見えた。
　
　
　
　
「好きだったよ」
　
　
　
　
学生時代と変わらない、彼女の笑顔だ。


＿＿目を瞑る彼は、眠っているようだった。顔に返り血が付いていても。

Aはゆっくりと屈んで、彼の唇に自分のものを合わせる。最初で最後のキスは、冷たかった。

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