四十五話 ページ45
「...嗚呼、そうだな」
「私は彼処で死のうとしててさ、それを織田作が止めて、今生きてるのも織田作がいるからなんだよ」
やっとの思いで顔を上げた。涙を堪える自分の顔は酷く醜くなっているであろうことは承知だ。
織田作の顔色が変わっていないことで、やっと諦めがついたとでも云おうか。
「...ごめんね」
「何でAが謝るんだ」
「云っておきたかっただけ。後これも。...私のことは、気にしないで」
私の仇は取らなくてもいい。気にしてはいないから。子供達の仇だけ、取ってきて。
「なら俺も云っておきたいことがある」
下げつつあった顔をまた上げる。
「Aはこれからも、変わらないでいてくれ。そのままの、今の侭のAで、ずっと」
「...うん」
俺の分まで、なんてことは云わなかった。お互いに、これからのことは話さなかった。
一人がいなくなることは、何方も判っていた筈なのに。
がた、と椅子の音を立てて、織田作は席を立った。
息を呑む音が私の中から聞こえた。同時に私もよろよろと立ち上がる。
「行ってらっしゃい」
私は無理矢理口角を上げた。
「愛している」
織田作は私に優しいキスをした。
最期のキスは、少し苦い、初めてのような味だった。
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みるくてぃー(プロフ) - りーこさん» コメント有難うございます!面白いと言って頂けて光栄です...頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: 7b7340be6b (このIDを非表示/違反報告)
りーこ(プロフ) - コメント失礼します。織田作が出てくる小説を初めて読みましたが面白かったのでこれからも更新頑張ってください。お気に入り登録しておきます。 (2019年10月8日 20時) (レス) id: 84cbb07a27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年10月3日 0時