【wrwrd】夢見がちお姫様【ut】 (ページ3)

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2.疑問ページ3

「いや、いやいやいや！待て、待てA！」
「どうしたんですか？」

どうしたもクソもないだろう。あの男のどこがかっこいいんだ？くたびれたスーツにボサボサの髪、匂いだってタバコ臭かった！

「えっと……、A的にどこがかっこよかったん？」
「どこが……ですか？」
「おん。」
「……特にどこって言うのはなくて。強いて言うなら一目惚れ、って言うやつですかね……？」

一目惚れ。それは自分に最も遠い存在であったその言葉であった。
……いや、彼のどこに一目惚れ要素があったんだ？

「な、ひ、一目惚れ？」
「はい……。」

頬を赤らめ、少し照れたように微笑む彼女を見て、頭にガツンとした衝撃が走った。自分の補佐を1年半ほどやってもらっていたが、その表情は今までに見たことすらなかった。

「そうか……。」

これが彼氏が出来たお父さんの気持ちか。分かりたくなかった、分かるつもりもなかった、分かってしまった。本来なら「今日は赤飯よ〜」と祝うべきなのだろう。だが相手が相手だ。手放しに喜べない。

「……すまん、今日は休みにしよか。ちょっと…頭の整理が追いつかん……」
「あ、すみません。……失礼します。」

そう言ってぺこりとお辞儀をして執務室を出ていったA。止める気にもならず、椅子によしかかって目を瞑った。自分はAに恋愛的な好意を抱いているわけではない。ただ、自分の中に親のような感情が存在するのだ。それは彼女が入軍したところまで遡る。

彼女が入軍したとき、その有能さと異質さが目立った。女性でありながらも軍人の男と渡り合える体術、そこらの学生に劣らない優秀な頭脳。しかし彼女にとって大切な自尊心の欠片もなかった。このままだと、いずれ自分を犠牲にしてしまうことは明白。自分と外交官、そして総統の3人で頭を悩ませたこともあった。そうして決定した「幹部候補生への昇進」。戦場に立たせて自分を犠牲にして戦わせるより、戦場に程遠い事務をやらせた。最初は彼女も「私を戦場に行かせてくれ」と頼んできたが、その内諦めた。自身の補佐に全力を尽くしてくれた。少し罪悪感を感じたが、彼女の心が少しずつ育っていった。それが何よりも嬉しいことだった。だったのだが……

「なんでアイツなんや……？」

納得いかない。シャオロンやコネシマ、ひとらんらんなら許してやろう。だが、だが鬱先生だけはどうにも認められない。

(絶対認めん……)

これも一種の親心というものだろう。とりあえず鬱先生が俺を認めさせるまでは認めん。絶対に。