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もしかして:トリップ その3 ページ13

ふっと、目が覚める。

「また寝ちゃってたなあ」
締め付けるような鈍い痛みを頭の奥で感じながら、ひとつ大きくあくびをする。そろそろこの癖なおさなきゃって思ってるけど、中々上手くいかないもんだなぁ。
痛み続ける頭になるべく刺激を与えないようゆっくりと両目を開いて、あたりの様子をうかがう。寝落ちたときにはまだ窓から日が差し込んでいて明るかったのに、今は数センチ先も見えないほどの暗がりの中だ。ずいぶん長い間眠っていたらしい。

もう一度寝直そうかと思ったけれど、色々考えているうちに目が冴えてきてしまった。こうなっちゃもうしかたない。気だるさの残る体に力を入れ、ごろんと逆の方向を向いた。
格子窓の隙間から見える空には満月が浮かんでいる。もうすっかり夜だなあ……。

……いや待て、私の部屋の窓に格子なんてないぞ。
気づいた瞬間、身体中を熱が駆け巡った。心臓の鼓動がどくどくうるさい。
いや、まさかそんな訳、と反射的に呟いたけれどようやく暗闇に慣れてきた私の両目に映る景色は見慣れないこじんまりとした和室のようすだ。床全体に自室のものと似たようなカーペットが敷いてあるから、感触だけでは自室とは別の場所にいることに気が付けなかったらしい。
眠りから中途半端に覚醒してきたせいか逆に混乱してきた。えっなんで?なんでまた急に?私は何に試されてんだ?
……よし。一回落ち着こう。それがいい。
上体を起こし大きく息を吸い込む。鼻の奥がつんとして、冷たい夜の空気が肺を満たした。体の熱がすっと抜けていった気がする。

何度か深い呼吸を繰り返した頃にはとっちらかっていた思考が大分まとまって、頭痛も綺麗に消えていた。むしろちょっと寒い。カーディガンの袖を指先まで伸ばしてさて次はどうしようか、と考えていると突然遠くからどたどた足音が聞こえてくる。とりあえずここの住人はいるらしい。
っていうかどんどん近づいてくるなこの足音。もしかしてこっちに来てる?なんて思っているうちにピタリと廊下を踏む音が止んだ。足音の主の目的地はどうやらこの部屋だったらしい。
振り向く間もなくものすごい勢いで後ろの木戸が開かれる。
数秒遅れて私がそちらを向くと、黒いコートを纏った少年が肩で息をして立っている。信じられない、といった様子で少年は何度か赤い瞳を瞬かす。

「久しぶり」
「……やっと会えた!」
清光は今にも泣き出しそうな笑顔でそう言うと、桜の花びらをいっぱい背負って部屋に飛び込んできた。

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ミミミ(プロフ) - こだぬきさん» ありがとうございます!こだぬきさんの元にもこだぬきさんの刀剣男士たちが訪れますよう願っております、私もいつか彼らとお話してみたいです(*´`)ゆっくり更新ですがゆるりとお待ち頂けると嬉しく思います。 (2019年5月2日 22時) (レス) id: 8134640c57 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!お話読ませて頂きました!私も実際に夢でもいいから自分の刀剣達に会いたいです…(*´ω`*)これからも応援させて頂きます!また遊びに来させて頂きます! (2019年5月1日 16時) (レス) id: 680cc78f50 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミミミ | 作成日時:2018年12月2日 16時

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