1話 ページ3
桜の香りが鼻を擽る。
ひゅう、と優しい風が頬を撫でて、桜の花弁があたりを雨のように散っていった。
私は、今日、高校生になる。
「そんなとこで突っ立ってると置いてくぞ」
『ちょっと、待ってよ!』
幼馴染のスマイルが、私の前を歩きながらそう吐き捨てる。
慌ててその後を着けば、スマイルは少しだけ嬉しそうな笑みを浮かべて同じペースで歩いてくれた。
校門をくぐり、今日、晴れて高校生になる私。……とスマイル。
さて、一体どんな出会いがあることやら!楽しみだし、不安でもある。
心臓が、少しだけ音を大きくした。……そんな時、ふわりと頭になにかがあたる。
「あんま緊張すんな」
『……してないし』
ぶっきらぼうな彼の手が、私の頭を数回ぽんぽんと撫でる。
心做しか、体の強ばりが少し取れた気がした。
「おはよう」
『あ、シャークん!おはよう!』
スマイルが私の頭から手を離したと同時に、親友のシャークんが私に声をかける。
シャークんは、スマイルより付き合いは短いが、親友と言えるほどなんでも共有した仲だ。
『シャークんも一緒なら百人力ですわ……』
「なんだそれ」
そう言ってぐーっと腕を伸ばすと、シャークんはくつくつと喉を鳴らしながら笑っていた。
桜が降る中、私とシャークん、そしてスマイルは玄関への道を歩いていた。
*
『えーっと、私のクラスは……』
玄関に張り出されたクラスの書かれた紙を、スマイルとシャークんの3人でじっと見つめる。
私は……、1年2組。シャークんは、同じ!スマイルも同じだ!
『やったー!同じ!同じだよ!シャークん!スマイル!』
「そうだな。」
「同じだからってはしゃぐなよ、うるせぇぞ」
『そんなこと言って、内心喜んでるくせに〜!』
そんな茶々を入れながら、私たちは靴を履き替え、校内へと入る。
1年2組まで3人でだらだらとお喋りをしながら行けば、そこにはもうそれなりに人が集まっていた。
教室の黒板には座席表が張り出されていて、そこを確認してみれば、私の席は後ろから2番目の窓際だった。
『げっ、シャークんとスマイルが遠い……』
「独り立ちだな」
『そんな事言わないでよぉ』
スマイルは一番前の廊下側、シャークんは廊下側の1番後ろだったのだ。
せっかく仲良しで集まれたのに、こりゃあないってもんよ……。
とぼとぼと覚束無い足取りで、自分の席へと向かう。
私の隣の席の子は、まだ来ていないようだった。
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ふぃるん(プロフ) - 華月さん» コメントありがとうございます!待たせちゃってすみません…色々忙しくて( ; ; )大好きって言ってもらえて嬉しいですありがとうございます!! (2021年10月26日 7時) (レス) id: 1a90758e7e (このIDを非表示/違反報告)
華月 - 初コメ失礼します!ちょっと久しぶりの更新でほんと嬉しいです…!この作品も作者様お2人のそれぞれの作品も大好きです!これからも頑張ってください! (2021年10月23日 21時) (レス) @page21 id: 91c51e0192 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃるん(プロフ) - 恋歌さん» では一生書いていきますね!!(嘘です)コメントありがとうございます…! (2021年9月11日 12時) (レス) id: 0639ff7076 (このIDを非表示/違反報告)
恋歌(プロフ) - やばい!何この神作品!一生読んでられるwふぃるんさんとみゅさんマジで好きです! (2021年9月10日 23時) (レス) id: 1374b51b68 (このIDを非表示/違反報告)
みゅ(プロフ) - 猫大好きさん» ありがとうございます!更新頑張ります!! (2021年9月9日 19時) (レス) id: 2723ce9aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふぃるん&みゅ x他1人 | 作成日時:2021年9月6日 18時