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保健室の前にAは到着した。
滅多に立ち寄らない場所で変に緊張するが、冷静に考えれば、このファイルと原稿を届けるだけの話。
そう思いながら、Aは意を決して目の前の白い扉を叩いた。
『…。』
すると、扉の向こうから少しの間も置かずに返事が来る。
「どうぞ。」
『………失礼します。』
Aは一呼吸置いて、そっと銀色の取っ手を掴み、扉を横に滑らせた。
そして開けた瞬間に、保健室独特の香りがAの鼻先を掠め、室内の奥で夏油が机に向かって作業をしている姿が目に入る。
「おやA、珍しいね…どうかしたのかい?」
夏油は一瞬だけAを見つめると、再びパソコンの画面に視線を戻した。
『あ、えっと…クラスの子の仕事、私が代わりに引き受けて…。』
「あぁ…委員会のだね。」
『そうなんです、さっき帰っちゃったんで…。』
「うん、凄い勢いで走っていたから、私も声を掛けられなかったよ。」
どうやら友人はAに頼んだ事を夏油に伝える事も無く、帰路に着いたらしい。
Aは内心、ほんの少しだけ呆れたが、夏油もそれは同様に見える。
互いに軽く笑い合うと、本題に移った。
「ファイルと原稿は持ってきた?」
『持ってきました…!』
「じゃあ、そこのテーブルに置いてもらえるかな。」
『はい、わかりました。』
夏油の仕事を邪魔をしないように気を付けながら、Aは室内に入り扉を閉める。
そして、夏油の指したテーブルに近付くと、Aはバッグのファスナーを開け、友人から預かったファイルと清書をした原稿を綺麗に並べた。
『…あの、これで失礼しても…?』
パソコンのキーボードを叩く夏油に、Aは静かに声を掛ける。
「あぁ、構わないよ、アンケートの集計大変だったでしょ?ご苦労様。」
『………ん、…ぇ?アンケート?』
「…ん?」
夏油の口から突如出た、アンケートと言う言葉。
原稿は良いとして、その事は友人から聞いていない。
Aは急いでファイルから大量の書類を取り出して見てみると、それは朝のHRで行った健康調査についてのアンケートが出てきたのであった。
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みゅん(プロフ) - シオリさん» シオリ様コメントありがとうございます!ドキドキして頂けて嬉しいです!私は夏油さんと五条さんお二人です。夏油さんのお話はこれからも書いていければいいと考えております! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - なっちゃんさん» なっちゃんさん様コメントありがとうございます!また、作品を見て頂けて嬉しいです!特別公開の事ですが、申し訳ありませんが、現段階ではその予定はございません。 (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
シオリ - いや夏油が先生であることにめっちゃドキドキしてる😳私は夏油推しなのですがみゅんさんは何推しですか?🙌😆 (2022年2月23日 6時) (レス) @page5 id: 36ddcc805a (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します。初めてこの作品を見たのですが、特別公開はもうされないのでしょうか。 (2022年2月20日 14時) (レス) id: 581025b236 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - 愛飢子さん» 愛飢子様コメントありがとうございます!申請に気付けず申し訳ありませんでした!また、作品の整理をしており申請をお受けする事は難しいです。折角送っていただいたのに申し訳ありません。新作を公開しておりますので、是非とも見て頂けましたら幸いです! (2021年10月17日 8時) (レス) id: 9090ac03df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2021年7月27日 20時