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Aは自宅に到着するやいなや、靴を揃える事もせず、廊下にバッグを放り投げると真っ先に風呂場へ向かった。
『…はや、く、…きれいに、しなきゃ…。』
正気を失っているA。
服を脱ぐ事すら忘れ風呂場の扉を開けると、即座に蛇口を捻り、頭から冷たい水を浴びる。
もう、自分自身の全てが穢れて見えた。
『きれ、いに、しなきゃ、きれ、ぃ…に…しなきゃ…。』
全てを洗い流したいと言う思いで、流水を受けながら身体を掻き毟る様に強く擦るA。
視線を下に向けると、ネクタイで縛られた事により、鬱血した両手首が目に入る。
動かせば動かす程に鈍痛が走るが、そんな事も構わずに、Aは痛む手を動かし続けた。
『…っ、きれい、に…しな、きゃ…。』
同じ言葉を口にする中、不意に五条の事を思い出すA。
記憶の中で、恋人が自身に向けてくれる優しい表情、優しい声。
そんな事を思い出すと、絶対にこんな身体では会う事は出来ない。
Aは強くそう思った。
『…、さと、るさん…。』
そして同時に、Aは夏油と先程行っていた事も鮮明に思い出す。
嫌でも忘れられない、ベッドの上での出来事。
あの行為は、A自身が受け入れた。
恋人と自分自身の為とは言え、理解していた事であっても胸が苦しくて堪らない。
『…ッ、ぅ、…っく…。』
どんな言い訳をしたとしても、あれは紛れも無く五条への裏切り行為である事には変わりが無い。
何よりも、A自身の心情に背く様に、体はあっさりと別の男を受け入れてしまったのだから。
その事実を受け止めきれず、Aは力無く脱力すると、冷たい床に崩れ落ちた。
『…っ、…、…ごめ、んなさい…。』
恋人へ向けて聞こえる筈の無い謝罪を述べるA。
シャワーの音が共鳴する中で、己の愚かさに一人嗚咽するAは、暫くの間そこから動く事が出来なかった。
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みゅん(プロフ) - シオリさん» シオリ様コメントありがとうございます!ドキドキして頂けて嬉しいです!私は夏油さんと五条さんお二人です。夏油さんのお話はこれからも書いていければいいと考えております! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - なっちゃんさん» なっちゃんさん様コメントありがとうございます!また、作品を見て頂けて嬉しいです!特別公開の事ですが、申し訳ありませんが、現段階ではその予定はございません。 (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
シオリ - いや夏油が先生であることにめっちゃドキドキしてる😳私は夏油推しなのですがみゅんさんは何推しですか?🙌😆 (2022年2月23日 6時) (レス) @page5 id: 36ddcc805a (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します。初めてこの作品を見たのですが、特別公開はもうされないのでしょうか。 (2022年2月20日 14時) (レス) id: 581025b236 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - 愛飢子さん» 愛飢子様コメントありがとうございます!申請に気付けず申し訳ありませんでした!また、作品の整理をしており申請をお受けする事は難しいです。折角送っていただいたのに申し訳ありません。新作を公開しておりますので、是非とも見て頂けましたら幸いです! (2021年10月17日 8時) (レス) id: 9090ac03df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2021年7月27日 20時