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HRが終了して、既に数十分以上が経過していた。
机に集って話をしていたクラスメイトや、廊下で騒いでいた生徒達はもう居ない。
この静まり返った空間は、何ら変わらない普段通りの風景。
いつもと何一つ違わぬ日常の一部にも関わらず、教室や廊下の静けさが、Aにはとても寂しく思えた。
『…。』
そして時計の針は無慈悲にも歩みを進めており、刻々と時間は過ぎて行く。
Aは夏油の元へは行きたくなかった。
だが、もしも行かない選択をした場合に起こるであろう最悪の事態は容易に想像が出来た為、結局Aは、夏油の待つ保健室へ行く事をやっと決意したのであった。
『…ふぅ、…。』
夕日で真っ赤に染まった階段を下りながら、速く鼓動を打ち続ける胸を鷲掴むA。
話をするだけだ。
きっと大丈夫。
そんな事を自身に言い聞かせながら、Aは一段ずつ下っていくだけの単調な動作をゆっくり繰り返した。
階段を全て下りた後、時間を掛けて廊下の歩みを進めると、Aは漸く保健室の前に到着したのであった。
『…、はぁ…、っ。』
先程よりも動悸が激しくなった気がするのは何故だろう。
声を出したら裏返ってしまいそうだった為、小さく深呼吸をした後に、Aは真っ白な扉を静かに叩いた。
廊下に木霊する小さな音。
『…。』
そして、その後の返事は無い。
人を呼びながら夏油は不在なのだろうか。
廊下の静けさに加えて、真っ赤な廊下は不気味で仕方が無い。
Aが何気無く保健室の扉に手を伸ばした時だった。
それを待っていたかの様に扉が開いた上、近距離で夏油と対面した為に、Aは驚きの声を漏らした。
『っ…?!』
Aはすぐに手を引っ込めて数歩後退ったのだが、夏油は特に気にする様子は無く、寧ろ時間通りに来なかったAに、疑問を投げ掛ける姿勢を見せた。
「…随分と遅かったね?」
『…、すみません…。』
Aは小さな声で夏油へ謝罪を述べる。
そして夏油は保健室から少しだけ身を乗り出して辺りを見回すと、Aに室内へ入る事を促したのであった。
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みゅん(プロフ) - シオリさん» シオリ様コメントありがとうございます!ドキドキして頂けて嬉しいです!私は夏油さんと五条さんお二人です。夏油さんのお話はこれからも書いていければいいと考えております! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - なっちゃんさん» なっちゃんさん様コメントありがとうございます!また、作品を見て頂けて嬉しいです!特別公開の事ですが、申し訳ありませんが、現段階ではその予定はございません。 (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
シオリ - いや夏油が先生であることにめっちゃドキドキしてる😳私は夏油推しなのですがみゅんさんは何推しですか?🙌😆 (2022年2月23日 6時) (レス) @page5 id: 36ddcc805a (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します。初めてこの作品を見たのですが、特別公開はもうされないのでしょうか。 (2022年2月20日 14時) (レス) id: 581025b236 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - 愛飢子さん» 愛飢子様コメントありがとうございます!申請に気付けず申し訳ありませんでした!また、作品の整理をしており申請をお受けする事は難しいです。折角送っていただいたのに申し訳ありません。新作を公開しておりますので、是非とも見て頂けましたら幸いです! (2021年10月17日 8時) (レス) id: 9090ac03df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2021年7月27日 20時