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『…っ?!』
夏油が急に近付いて来た事で驚いたAは、小さく肩を震わせた。
また何かされる、そう思ったからだ。
Aは身構える様にして目蓋を閉じ、次に備えた訳だが、どう言う事か幾ら待っても何も起こる事は無い。
「…。」
『…?』
不審に思い、片方の目蓋だけを持ち上げてそっと前を見るA。
すると、夏油は自身の上着を脱いでおり、Aに掛けようとしている最中だった。
「これ、着てていいから。」
『…。』
Aの身体を優しく包む様に、夏油は上着を掛けてやる。
上着を掛ける際、夏油の抱き締める様な動作にAは少しだけ動揺したが、目の前の夏油は本当に何もしてくる様子は伺えない。
それを感じたAは、夏油に対して少しの疑心感を残しながらもその行為を受け入れた。
「…。」
『…ぁりがとう、…ございます…。』
Aが小さな声で礼を述べると、夏油は徐に立ち上がり、Aに背を向けながら扉の方へ向かって行ってしまった。
その間、胸元のポケットから自身のスマートフォンを取り出す夏油。
何処へ連絡を入れるつもりなのだろう、とAが考えていると、夏油は静かな声でこう告げたのである。
「…取り敢えず、悟には報告するからね。」
どうやら夏油は、Aの担任である五条へ報告をしようとしていた様だ。
こんな事が起きてしまい当然の事ではあるのだが、それを聞いたAは、真っ先に五条が自身を心配する情景が頭に浮かんだ。
本来ならば報告するべき案件なのは解っている。
それでも、この事を五条に知られれば様々な問題が出て来るのをAは解っていた。
五条を心配させなくない。
Aはその一心で迷う事無く立ち上がり、肩に掛かった上着を抱き締めながら、夏油の元へ小走りで向かった。
そして、スマートフォンを操作する夏油の手を取ったAは、即座に連絡を止めるように告げる。
『…言わないで、…ください…。』
「…何故だい?」
夏油は自身の手を弱々しく握るAを見つめて、静かに尋ねた。
するとAは、声を震わせながら五条を案じる様な発言をして、不安そうに呟く。
『…心配、かけるから。』
「…。」
『…だから、…お願い、します…。』
「…わかったよ。」
夏油はAの願いを聞き入れる事にし、スマートフォンの画面を閉じた。
そして、それを見て安心したAは、夏油の手をそっと離したのであった。
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kotorei - 心が痛い。だが面白い……‼︎続編ででて驚きました‼︎遅いですがおめでとうございます‼︎更新待ってます!! (2022年8月26日 23時) (レス) @page14 id: 9a57db6317 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 続きを楽しみにしています!!もしよければ、パスワードを教えていただけませんか? (2022年3月29日 7時) (レス) id: f998eec890 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - なっちゃんさん» なっちゃん様コメントありがとうございます!また大変お待たせして申し訳ありません。更新しましたので、ご覧頂けましたら幸いです。 (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - 焦げた春巻きさん» 焦げた春巻き様コメントありがとうございます!更新いたしましたのでご覧頂けると嬉しいです! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 公開していないだけでしょうか?続きお待ちしています (2022年3月3日 18時) (レス) id: 581025b236 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2022年2月23日 2時