検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:25,210 hit

108 ページ13

『…っ?!』





夏油が急に近付いて来た事で驚いたAは、小さく肩を震わせた。

また何かされる、そう思ったからだ。

Aは身構える様にして目蓋を閉じ、次に備えた訳だが、どう言う事か幾ら待っても何も起こる事は無い。





「…。」

『…?』





不審に思い、片方の目蓋だけを持ち上げてそっと前を見るA。

すると、夏油は自身の上着を脱いでおり、Aに掛けようとしている最中だった。




「これ、着てていいから。」

『…。』





Aの身体を優しく包む様に、夏油は上着を掛けてやる。

上着を掛ける際、夏油の抱き締める様な動作にAは少しだけ動揺したが、目の前の夏油は本当に何もしてくる様子は伺えない。

それを感じたAは、夏油に対して少しの疑心感を残しながらもその行為を受け入れた。





「…。」

『…ぁりがとう、…ございます…。』





Aが小さな声で礼を述べると、夏油は徐に立ち上がり、Aに背を向けながら扉の方へ向かって行ってしまった。

その間、胸元のポケットから自身のスマートフォンを取り出す夏油。

何処へ連絡を入れるつもりなのだろう、とAが考えていると、夏油は静かな声でこう告げたのである。





「…取り敢えず、悟には報告するからね。」





どうやら夏油は、Aの担任である五条へ報告をしようとしていた様だ。

こんな事が起きてしまい当然の事ではあるのだが、それを聞いたAは、真っ先に五条が自身を心配する情景が頭に浮かんだ。

本来ならば報告するべき案件なのは解っている。

それでも、この事を五条に知られれば様々な問題が出て来るのをAは解っていた。

五条を心配させなくない。

Aはその一心で迷う事無く立ち上がり、肩に掛かった上着を抱き締めながら、夏油の元へ小走りで向かった。

そして、スマートフォンを操作する夏油の手を取ったAは、即座に連絡を止めるように告げる。





『…言わないで、…ください…。』

「…何故だい?」





夏油は自身の手を弱々しく握るAを見つめて、静かに尋ねた。

するとAは、声を震わせながら五条を案じる様な発言をして、不安そうに呟く。





『…心配、かけるから。』

「…。」

『…だから、…お願い、します…。』

「…わかったよ。」





夏油はAの願いを聞き入れる事にし、スマートフォンの画面を閉じた。

そして、それを見て安心したAは、夏油の手をそっと離したのであった。

109→←107



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (178 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
381人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

kotorei - 心が痛い。だが面白い……‼︎続編ででて驚きました‼︎遅いですがおめでとうございます‼︎更新待ってます!! (2022年8月26日 23時) (レス) @page14 id: 9a57db6317 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅 - 続きを楽しみにしています!!もしよければ、パスワードを教えていただけませんか? (2022年3月29日 7時) (レス) id: f998eec890 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - なっちゃんさん» なっちゃん様コメントありがとうございます!また大変お待たせして申し訳ありません。更新しましたので、ご覧頂けましたら幸いです。 (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - 焦げた春巻きさん» 焦げた春巻き様コメントありがとうございます!更新いたしましたのでご覧頂けると嬉しいです! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 公開していないだけでしょうか?続きお待ちしています (2022年3月3日 18時) (レス) id: 581025b236 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みゅん | 作成日時:2022年2月23日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。