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改札に定期券を通してホームを抜けると、生徒やサラリーマンで溢れ返っている。
そして同じ言葉を口々にしていた。
「遅延だってさ、…最悪。」
「電車、遅れてんのかよ。」
電光掲示板を見てみると、確かに遅延の文字が表示されている。
Aは早く学校に到着したら、保健室に保冷剤を返しに行くつもりだったので、正直落胆した。
文句を言っても仕方無いので、Aはスマートフォンを出して時間を潰す事に決める。
そして長時間待った末に、耳に馴染んだアナウンスと電車が謝罪と共にやって来たのであった。
『…やっと来た。』
この時、既に一時間以上も遅れていたのだが、学校には何とか間に合いそうだった。
押し詰められた電車に揺られながら、Aは学校の最寄り駅に到着すると、電車を利用している生徒に混じって改札を抜け、学校まで走り出す。
『…うわ、ギリギリ…っ。』
何とか昇降口に到着したA。
玄関で靴を履き替えて、後は教室までの階段を駆け上がるだけだ。
一段飛ばしをしながら上を目指す。
『…、っ、…はぁ、っ…疲れた…。』
息を切らしながら階段の中腹まで上った頃だ。
少しだけ休憩していると、聞き馴染んだ声が上から降って来たのだ。
「お、A…おはよ。」
『…ぁ、お、おはよう。』
そこには出席簿と日誌を持って、今から教室に向かう途中の五条が立っていた。
ふらつきながらAが階段を上り切ると、五条は軽くAの身体を受け止めて、頑張ったね、と告げた。
「A、髪ぼっさぼさ…。」
『ん…電車、ギリギリで。』
「…結構走ったんだ、大丈夫?」
『うん、大丈夫…。』
五条はAに出席簿と日誌を持たせると、Aの乱れた髪を直してくれた。
誰かに見られたら大変だが、遅刻寸前の時間帯故に、先生や生徒は今いない。
少しだけ刺激のある事をするのは悪くないかも、とAは思いながら微笑む。
「ん、これでいいかな。」
『…ありがと。』
「あと、無理はしないでね、何かあったらすぐ僕のところに来ること。」
『うん、わかった。』
五条に軽く頭を叩かれながら、そう優しく注意を受けるA。
そしてAが五条へ持ち物を返すと、静かな廊下を二人で歩いて教室へ向かったのであった。
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みゅん(プロフ) - 焦げた春巻きさん» 焦げた春巻き様コメントありがとうございます!そんな風に思っていただけるのは嬉しい限りです!応援ありがとうございます! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - おもち。さん» おもち。様コメントありがとうございます!そう言って頂けるのはやっぱり嬉しいです!ありがとうございます! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ???*??さん» ???*??様コメントありがとうございます!現在は作品整理をしている最中ですので申請をお受けするのが難しい状況にございます。折角のお話でしたのに申し訳ありません。ただ、特別公開をする事がございますので、その際にでも読んで頂けましたら幸いです。 (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ほーんりさん» ほーんり様コメントありがとうございます!お心遣いに感謝いたします!ありがとうございます! (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
焦げた春巻き(プロフ) - うああ夢主が救われない…心痛むけど展開が気になる作品です!これからも応援しています。 (2022年2月23日 15時) (レス) @page20 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2021年11月4日 2時