〈95〉 ページ20
『っ、…く…、…。』
「…。」
五条がどんな事をしても、Aは口を噤んだまま。
言いそうになってしまう瞬間があっても、それを告げた後の事がすぐに頭に浮かんで、Aは思い留まってしまう。
どんな事があっても言わない。
Aのその固い意志は砕けなかった。
『っ、…は…。』
「…何も、言わないんだ。」
五条は静かにそう呟くと、Aから離れて自身の乱れた服装を直し始めた。
Aの両手首を縛り付けたベルトを外してやり、自由にする。
未だに身体が重く動けないAは、五条の広い背中を朦朧とする意識の中で見つめた。
『は…ぁ…、ッ…ぅ…。』
五条の着替える音と、Aが呼吸をする音がだけが部屋に響く。
その中で、不意に五条が諦めた様に呟いた。
振り返り、床で踞るAを五条は微笑んで見下ろす。
「…もう、いいや。」
もう、いいや、とはどんな意味が含まれているのだろか。
Aの頭の中には一瞬で嫌な予感が過った。
五条の表情は酷く冷たい。
『…っ、…。』
息の詰まる様な感覚がAを襲う。
Aの速まる鼓動に相反するかの如く、五条のゆっくりな声。
「…僕達さ。」
言わないで、その先の言葉は聞きたくない。
Aは強くそう願ったが、五条の声は止まる事無く耳に届いてしまう。
そして、残酷な事を告げられてしまった。
「もう、終わりだね。」
終わり。
自身達の関係の終わりを示す言葉。
Aは目を見開いて五条を見たが、視線すら合わせて貰えず、五条は再びAに背を向けて溜め息を吐いたのだった。
『そんな、…やだ…。』
「…。」
『さ、さとるさん、…私っ…！』
Aは震える声で五条を呼んだ。
だが五条はそれに反応せず、相変わらずAに背を向けたままだ。
Aは縋る様に、五条の足元に踞り懇願する。
『やだ、よ…さとるさん…。』
Aは涙を流してその思いを告げたが、五条の意思は一向に変わる様子は無かった。
最後には、呆れ声で即座に呼び方も止めるように牽制した位なのだから。
「もうさ、その呼び方も止めて。」
『…っ、…。』
「お前はもう、ただの生徒だから。」
五条は、只の生徒、そう冷たく言い放った。
Aにとってその言葉はあまりにも悲しく、非情な程に残酷な言葉だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 837人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みゅん(プロフ) - 焦げた春巻きさん» 焦げた春巻き様コメントありがとうございます！そんな風に思っていただけるのは嬉しい限りです！応援ありがとうございます！ (2022年3月19日 6時) (
レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - おもち。さん» おもち。様コメントありがとうございます！そう言って頂けるのはやっぱり嬉しいです！ありがとうございます！ (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ???*??さん» ???*??様コメントありがとうございます！現在は作品整理をしている最中ですので申請をお受けするのが難しい状況にございます。折角のお話でしたのに申し訳ありません。ただ、特別公開をする事がございますので、その際にでも読んで頂けましたら幸いです。 (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ほーんりさん» ほーんり様コメントありがとうございます！お心遣いに感謝いたします！ありがとうございます！ (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
焦げた春巻き(プロフ) - うああ夢主が救われない…心痛むけど展開が気になる作品です！これからも応援しています。 (2022年2月23日 15時) (レス) @page20 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みゅん
| 作成日時：2021年11月4日 2時
