〈86〉 ページ13
時刻が18時を回った頃、五条は職員室を出て休憩時間を過ごしていた。
辺りも僅かに暗くなり、廊下の電灯が眩しく思える。
「…はぁー、疲れた。」
五条は財布を手に持ち、職員室から一番近い階段を下りて行く。
飲み物を買いに行く為だった。
階段を下りて廊下へ出ると、隣の校舎へ渡ってすぐに普段から利用している自販機があり、五条はそこの場所へいつも行っていた。
早速、飲み物を買おうと財布に手を掛けた五条だったが、ボタンには売り切れの表示がある事に気が付く。
「…売り切れ。」
脳が甘い物を欲しがっているのに、丁度切らしている自販機に多少苛立ちを覚える五条。
だが、遠くはなるがそこの自販機にも同じ飲み物が売ってある事を思い出し、五条は再び歩き始めた。
暗く長い渡廊下を歩く事数分。
更に別の校舎に差し掛かると、暗闇の中で煌々と光る自販機がすぐ目に入って来た。
「…お、あった。」
遠目で見ても、自販機のボタンは購入可能を示しているのが解る。
五条は自販機まで歩み寄ると小銭を入れてボタンを押し、漸く目的の飲み物を手にした。
「…よし。」
これで一息つける。
そう思い、ペットボトルの蓋を開けて自身の口に運ぶ寸前、五条は不意に廊下の窓を見た。
「…。」
暗闇の中で誰かが走っている。
背丈や格好を見る限り女子生徒。
薄暗い中ではあったが、五条は目が良いのでそれが誰だかすぐに気が付いた。
「あ。」
窓の向こうに居たのはAだ。
急いでいるのか、小走りで昇降口へ向かっている様子が見て取れる。
それを見た五条は、飲み物をそっちのけでAの後を静かに追う事にした。
理由は単純で、後ろから驚かしてやろう、と言う子供じみた物。
「…。」
五条もAに続いて昇降口に到着する。
五条は靴を履き替えているAの背後に大股で忍び寄ると、急に後ろから抱き締めた。
「A。」
『…ッ?!…あ、…さ、さとる…さん…。』
Aは肩を震わせ、驚きの声を小さく上げた。
そして暫くの間、五条の腕の中で震えたまま動かなかったのである。
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みゅん(プロフ) - 焦げた春巻きさん» 焦げた春巻き様コメントありがとうございます!そんな風に思っていただけるのは嬉しい限りです!応援ありがとうございます! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - おもち。さん» おもち。様コメントありがとうございます!そう言って頂けるのはやっぱり嬉しいです!ありがとうございます! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ???*??さん» ???*??様コメントありがとうございます!現在は作品整理をしている最中ですので申請をお受けするのが難しい状況にございます。折角のお話でしたのに申し訳ありません。ただ、特別公開をする事がございますので、その際にでも読んで頂けましたら幸いです。 (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ほーんりさん» ほーんり様コメントありがとうございます!お心遣いに感謝いたします!ありがとうございます! (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
焦げた春巻き(プロフ) - うああ夢主が救われない…心痛むけど展開が気になる作品です!これからも応援しています。 (2022年2月23日 15時) (レス) @page20 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2021年11月4日 2時