〈75〉 ページ12
『ッ?!離して!』
「そういう態度は感心しないな。」
『止めてッ…もう用は済んだじゃないですか…!』
「あれ?私との約束、忘れたのかい?」
夏油は、恐らく動画の事を言っているのだろう。
勿論、Aは忘れてなんかいない。
寧ろ、忘れられず苦しんでいる。
だが、夏油はそれを解っていても止めてはくれないのだろう。
『…離して…!』
「離して貰えると思う?こんな状況で。」
夏油は微笑みながら、Aの腕を強引に引くと、前回と同様にベッドへ押し倒した。
肩からバッグは崩れ落ち、Aは夏油に組み敷かれてしまう。
『やだ!…何でッ…!』
「何で?…だから、約束したよね?何でもするんでしょ。」
『…っ、もう、こんな事しなくたって…。』
「一度きりで済ませる訳無いじゃないか。」
夏油はネクタイに長い指を掛けて、静かに解き始めた。
そして軽く微笑むと、それを手にしたままAを見下ろして尋ねる。
「…縛ろうか?暴れないように。」
『…ッ、…。』
「はい、腕上げて。」
『や、やだッ…!』
「…A、暴れるからね?縛っておかないと。」
夏油はAの両手首を掴み、ベッドの柵の近くに強い力で押さえ付けた。
逃げたい、とAは思うが、夏油の腕を振り解こうにも力では勿論敵わないし、脚をバタつかせれば空いた片方の手で受け止められてしまう。
ここまで状況が進んでしまったら、もう逃げるのは難しい。
『…っ、…く…。』
「逃げられるなんて考えない方がいい。」
夏油は本当にAを逃がしてはくれない様だ。
ネクタイを両手首に縛られる寸前になり、漸くAは夏油を受け入れる事に決めた。
再び痕を残して恋人を心配させる位なら。
悲しませる位なら。
それならば、自身が苦しむ方を選択した方が絶対に良い、Aはそう思い、夏油へ小さな声で呼び掛ける。
『…暴れない、からッ…。』
「…。」
『…だから、…縛らないで…。』
「…わかった、いいよ。」
夏油は縛り掛けたネクタイと、Aの両手首を離す。
そしてAは、抵抗しない証として身体の力を抜いたのであった。
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みゅん(プロフ) - 焦げた春巻きさん» 焦げた春巻き様コメントありがとうございます!そんな風に思っていただけるのは嬉しい限りです!応援ありがとうございます! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - おもち。さん» おもち。様コメントありがとうございます!そう言って頂けるのはやっぱり嬉しいです!ありがとうございます! (2022年3月19日 6時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ???*??さん» ???*??様コメントありがとうございます!現在は作品整理をしている最中ですので申請をお受けするのが難しい状況にございます。折角のお話でしたのに申し訳ありません。ただ、特別公開をする事がございますので、その際にでも読んで頂けましたら幸いです。 (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
みゅん(プロフ) - ほーんりさん» ほーんり様コメントありがとうございます!お心遣いに感謝いたします!ありがとうございます! (2022年3月19日 5時) (レス) id: a9a2211c25 (このIDを非表示/違反報告)
焦げた春巻き(プロフ) - うああ夢主が救われない…心痛むけど展開が気になる作品です!これからも応援しています。 (2022年2月23日 15時) (レス) @page20 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゅん | 作成日時:2021年11月4日 2時