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神子柴君と神子柴晶 ページ27

神子柴晶は屋上に居た。

先程まで居た女の子は縄で縛られて連れて行かれた。

屋上の風は変わらなかった。


「先輩、」

「おっ、もしかしなくても龍君?いやぁ懐かしいね!」

「どういう事ですか?」


バレちゃった?と戯けた晶はそのドス黒い野望を秘めた目で銀髪の青年を見た。

白槻の目からは怒りの感情がストレートに感じられた。


「君は弟を知らない。」

「…何を言って、」

「彼は、彼は暗闇で生きてきた。私も、親も、親戚も、友達も、クラスメイトも、教師も!
親の仇みたい目で見てた、あの部長さんが現れるまでは。」


演劇部部長は神子柴龍巳の全てを変えたと聞いていた。

…確かに、あの日から変わった。

以前よりはずっとマトモな青年になった。

白槻は少なくとも自分はそう思っていると心の中で呟いた。


「あの部長さん、龍巳の全てを変えて、そして死んだの。死は恐ろしい!でも死は美しい。
私は部長の死を、部長が死んだ事によって龍巳がどうなるか見たくて…」

「もういい、アンタは…!」

「おにーさん。」


上から声がした。

梯子から神子柴が降りてきた。


「やあ弟!…約10年振りだ。」

「…やあ姉貴、死んでいただけないか?」


神子柴なりにオブラートに包んだつもりなのだろうが晶にはストレートに届いた。


(…苦労を、苦労として感じてない。)


晶が一番「恐れていたこと」、其れが今の神子柴の姿だった。

晶が用意した苦労を、逆に楽しんでいた。

楽しむ余裕がなかった自分とは大違い、

笑ってすらいた。


「少しは、少しは苦労しなさいよ!」

「アンタの苦労は苦労じゃなくて不幸だ、可哀想になァ…でも、」


神子柴は笑っていた。

実の姉を、哀れな姉を、不幸で可哀想な姉を、

蔑み笑っていた。

白槻は本当に性格が悪いな…と呆れた。

晶は泣いていた。


「それなら、これからもっと不幸にしてやる。アンタが死ぬまで、死ぬまで…!」

「泣くなよ姉貴。ほら、お迎えだ。」


校長が屋上に入る。

白槻は軽く会釈した。


「屋上は立ち入り禁止だぞ。」

「申し訳有りません。」

「神子柴君、君捜査は?…早くしないと警察にバレるぞ。」

「承知しています。もう、あと少しですよ。」


歴代の奴等が辿り着けなかった奥地へ、

神子柴は其処へ手を伸ばしていた。

白槻と神子柴は屋上を去った。

静かな屋上に風が翔けた。

神子柴君と弟→←神子柴君と理科準備室



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龍巳@キチガイ - 睡眠酸素さん» じゃあ次のキャラデザ要求いつかしますんで!待っててね!!それまでにお仕事見つけてね!!!!!! (2017年1月10日 21時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠酸素 - oh…イメージ通り過ぎて逆に怖いっていうかすげぇええええ!!!素敵ウワアアアアめっちゃ楽しみってか次の小説も出たい! (2017年1月9日 22時) (レス) id: 397257de9d (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 【 】nanashiさん» は?何言ってんすか名無しさん文才まじください (2016年12月18日 19時) (レス) id: 7edea2d573 (このIDを非表示/違反報告)
【 】nanashi(プロフ) - 龍巳@キチガイさん» やばい、自分がこの中にいる!津原から聞いてるけどまさかこれ程とは、文才ください。 (2016年12月16日 16時) (レス) id: 1572cb3dd0 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - みるくらいす(紅茶10%)さん» 絵描いてー (2016年12月15日 20時) (レス) id: 7edea2d573 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2016年11月18日 19時

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