満月の夜の集会所【2j3j】 (ページ3)

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† Encounter ページ3

扉の先にいたのは幼い女の子だったのだ。
てっきり剣持かギルザレンのどちらかが忘れ物を取りに来たのだと考えていたカザキは、驚いて声も出せず口をパクパクさせるしかなかった。

『あの…ごめんなさい、道に迷ってしまって』
『迷惑ですよね、すみませんつい…』

少女は申し訳なさそうに眉を8の字にして必死に語りかけてくる。流石に何も答えないのも可哀想なので、何とか声をひねり出す。確かこの子はさっきいい匂いがしたと言っていた。

カ「えっと…お腹が空いているの？」

『あ、はい…しばらく何も食べていなくて』

今日は年に一度の集会という事で張り切って料理をしすぎてしまったのだ。ふたりが帰ったあとだがまだ料理が残っている。その匂いに釣られてきたのだろう。勿体無いと思っていたところだ。

カ「それならうちで食べていって！ご飯が残っているの、丁度良かった！」

『ほんとうですか！ではおじゃまします！』

途端にパッと花が咲くように笑顔になる少女。
なるほど、剣持の言うように幼い生命を慈しむ…というのは理にかなっているのかもしれない。
そんな事を考えながら食堂へ向かった。

そこで料理を片手に少女はこう語った。

少女はここからかなり遠い村で生まれた
ヴァンパイアと人間のハーフである。
その村では吸血鬼狩りが盛んで、ヴァンパイアの母親はもちろん人間の父親をも殺されてしまった。
村から必死になって逃げ続け、今に至る…

ここまで聞いてふと思う、

カ「行く宛てはあるのかしら…？」

『あ、えっと…無い、です。えへへ…』

嫌な予感は当たり、行く宛てがないらしい。
この辺りは半径数kmが木々や川しかない森で、森の中にポツンと1軒館があるだけなのだ。むしろよくたどり着くことが出来たと褒めたいところである。

しかしこの館広くて住みやすいのだが、広い館に1人で暮らすというのは人外にとっても寂しいものであった。集会も年に1度と銘打ってしまったのであまり頻繁に友人を呼ぶことも出来ずにいたのだ。

ここまで考えて気がついた。
利害が一致しているのではないか？

1人で寂しいカザキと、行く宛ての無い少女。

そうと決まれば少女の名前も知りたいところであるし、裸足で走ってきたのだろうか足や服が傷だらけなので早急に綺麗してあげたい。

カ「よし！お風呂に入りましょう！」

『えっ！？』

…順番を間違えたのかもしれない。
しかし驚きつつも目を輝かせ、期待に満ち溢れた少女は A と名乗ったのであった。