満月の夜の集会所【2j3j】 (ページ2)

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† Prolog ページ2

今日は年に一度のヴァンパイア集会の日。
美しい白髪を靡かせ鼻歌まじりに食器を用意するヴァンパイア、カザキ主催で開かれるその集会にはお世辞にも豪勢とは言えないような人数しか参加しないのだが、古くからの友人と茶を飲み交わすのはやはり人間でも人外でも楽しいものなのだ。

ふと、ピタリと鼻歌を止めカザキは考えた。
ここ数十年前に突如現れるようになった紫髪のヴァンパイア、たしか幼き生命を慈しむ…だの嬉々として語っていた記憶がある。
幼き生命という言葉が示すものが彼にとって人間基準なのかヴァンパイア基準なのかは分からないが、これには気をつけるべきかもしれないな。
そう思い至ったので、食器を並べ終えたカザキは約1年前までは使用していなかった部屋へ歩を進めた。

約1年前のヴァンパイア集会。
集会に来ていた紫髪のヴァンパイア、剣持刀也。そして剣持刀也と仲がいいのか悪いのか…尊厳を忘れ言い争いを繰り返すギルザレンIII世。この2人がギャイギャイと争いながら帰った後の事だった。

ーコンコン。

扉をノックする音が響いた。
先程帰った2人のうちどちらかだろうか？
そう考えながらカザキは扉の方へ向かう。
しかし、カザキは気が付かなかった。
騒がしかった館は一変して静かになったため、小さな音でも大きく感じるのだ。
…そのノック音は2人がしたとは思えないほど弱々しい音だった。

カ「はーい、何を忘れ…た、の…？」

そこに居たのは剣持でもギルザレンでも無く

『あ…いいにおい、が、して…』

まだ幼い人間？、だった。