紫陽花の君【オリジナルBL】 (ページ3)

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「…あぁ、色々迷惑をかけたみたいだね。ごめん」

アオハは起きてすぐ、コウが自分の病室にいることに気付き、状況を察した。

コウは一瞬、何が迷惑なのか分からなかった。

「…あ、あぁ。体調大丈夫？」

入院しているのに大丈夫と聞くのは変だな、と言ってすぐ思った。

「大丈夫だよ。…でも、今日は惜しかったな」

そう言いアオハはふと窓の方を見た。

「…惜しい？」

窓の外はまだ糸のような雨が降っているだけだった。

「抜け出したんだ、紫陽花が見たかったから」

そういうとアオハはいらずらっぽい笑みを浮かべた。

さっき看護師が探していた、と言っていたのはこういうことかとコウは思った。

そういえばアオハの病室には紫陽花の絵がいくらか飾られている。

アオハは病気で外に出てはいけないのかもしれない。

「安心して。普段は外に出ても大丈夫なんだ。だけど今日は雨だし気温が低いからね」

病気で出れないのか尋ねる前に答えられてしまった。

ただし、付き添いの人が居ないとだけどね。アオハはそう付け足した。

「ねぇ、ところで君、なんて言うの？」

そういえばまだ自己紹介をお互いにしていなかった。

「…谷村コウ」

「コウね、僕は千世アオハ」

ちとせ、あおは。漢字は分からないけど病室の前に書いてあるかもしれない。

よろしく、そう言ってアオハは手を差し出した。

「よろしく」

握った手は冷たかった。