紫陽花の君【オリジナルBL】 (ページ14)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:5,174 hit

エピローグページ14

しとしと、糸のような雨が降っていた。

カメラを手にする青年、" 谷村コウタ " は真っ白な紫陽花を撮っている。

4月から通っている学校の制服に身を包んで。

コウタは傘もささず、しゃがんで紫陽花を撮っている。

防水だからカメラが濡れてダメになる心配はない。

コウタは紫陽花が好きだった。

特に、真っ白な紫陽花が好きだった。

何故かは分からない。

けれど、写真を撮り続けていたら、何か起こる気がしていた。

今日はこんな天気だ。

雨が降っている。

けれど、こんな雨が降っている今日が絶対良い気がしていて学校をサボった。

「ねぇ、そこの君。白い紫陽花の花言葉知ってる？」

後ろから、とても懐かしい声が聞こえた気がした。

「…もちろん、」

コウタは立ち上がり、振り返ってその声の主の顔をはっきり見ながら言った。

「花言葉は、ひたむきな愛情」

声の主は嬉しそうに微笑んだ。

「…今日から君と同じ学校に通う、 " 千世アオ " だよ。よろしく」

千世アオは、コウタと同じ制服を着ていて、手を差し出している。

「よろしく」

コウタは差し出された手を握った。

温かかった。

コウタが、次に言う言葉は、随分前から決まっていたと思う。

ずっと前、 " コウタ " が生まれる前から。

「 " アオハ " 俺、アオハのことが____

糸のような雨に振られる真っ白な紫陽花は、いつまでも優しく、2人を見守っていた。