紫陽花の君【オリジナルBL】 (ページ1)

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しとしと糸の様な雨の降る日、谷村コウは公園に訪れていた。

病院の近くの公園だ。

いつもは入院患者が散歩をしているのを見かけるが、今日は少ない。

毎年ここで、この季節に咲く紫陽花を見るのが好きだった。

今年はお正月の時に親戚の叔父さんにカメラを貰ったので、その時からこの季節が来ることをずっと待っていた。

生憎の雨で跳ねまくってしまう髪も、濡れた紫陽花の前では気にもならなかった。

カメラが濡れないように傘をさしながらシャッターを切る。

まだまだ納得のいくように撮れないが、それでも紫陽花が撮れることは嬉しかった。

カタツムリがいる。

紫陽花の上で移動しているカタツムリも愛らしい。

しゃがんでじっと見ていると、近くでくしゃみをするのが聞こえた。

顔をあげると、隣に病院の服を着た人がしゃがんでいる。

傘はさしていなかった。

誰が見ても美しいと感じるであろう顔の造形。

「紫陽花、好き？」

ごく自然に問いかけてきた。

「…あ、はい。好きです」

声的に同性であることに驚いたが、思わず見とれてしまっていた。

「僕も好き。綺麗、だよね…」

そういうとぐらりと動き、そのまま倒れてしまった。

「えっ、だ、大丈夫ですか!?」