結晶が一つ ページ3
Gr side
Gr「…ここか。」
地下に続く道を見ながら、俺はトン氏と共に身元漏洩防止の仮面を被る。ちなみにちゃんとレンズ嵌ってるから眼鏡なくてもいける。
Tn「じゃあゾム、ここで待機な。」
Zm「いってらっしゃーい。」
カツ、カツ、と自分たちのブーツの音が響く階段を降りると、そこは一気に華やかさを増して、高級感のあるエリアへと出た。これまた仮面を被ったここの店員なのかは分からないが案内され、席に着く。
Tn「…微かやけど色んな声とか音聞こえるな。」
Gr「あァ…どうやら人外達がここで売られているのは本当のようだ。」
今回俺たちがここに来たのは調査のため。本当に無断の人外達の売買がされているか、ここは処分するべきかを決めるために。場合によっては後日襲撃することになるだろう。
Tn「あ、始まるで。」
時間になり、次々と【商品】たちが競りに出されていく。珍しい宝石から人魚、ドラゴンの子供、狼男に小人まで、嗜好品を求めて富豪たちが声を上げる。元々何も買う気はなかったので、俺たちはただその一連の流れを見続けていた。
Gr「…つまらん。やはり地下でやるだけあって見たことある奴らしかいない。」
Tn「あれくらいなら世間でうようよしとるからな。あーでもドラゴンの子供は珍しかったかも。」
Gr「けどそれだけだ。」
息をつきながら最後の【商品】のお出ましとなり、俺はどうせと思いながら早く終わらないかと思っていた。けれどそこに居たのは結晶を持つ珍しい半獣人の娘だった。白く長い煌めいた髪に、オーロラ色の虹色の瞳が酷く美しい。でも、その目には生気がなかった。もう生きることを投げ出したような、そんな瞳。それを見た俺は一瞬で決めた。
Tn「はえー…えらいべっぴんさん…」
Gr「…トン氏。」
Tn「うん？」
Gr「買うぞ。」
Tn「…好きにせい。」
俺の考えることを察してくれたのかトン氏はそう言ってくれたので、遠慮なく他より多額の値段を叩きだし、俺はその子を買った。手続きをして、連れてこられたその子を見ると、やはりどこか憂鬱な雰囲気で、何もかも諦めているような顔だった。体も細く、所々から生えている結晶や尻尾が重たそうに見えた。帰る道中の車の中で、
Gr「…お前、名前は？」
『あ、えと…A、です…』
Gr「そうか。これから行く場所はお前を縛らない場所。どうか気を楽にしてくれ。」
『…！』
途端に目に少し光が宿り、俺は案外この子の光を取り戻すのは早いかもと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 402人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれいん(プロフ) - きゅるきゅる、ウルル…ここめちゃくちゃ好きです。 (2020年12月8日 23時) (
レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
×(プロフ) - こんなに面白い作品が読めてうれしいです！応援してますヽ(^o^)丿 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 2c8e323fdc (このIDを非表示/違反報告)
(´ー｀*)ｳﾝｳﾝ - 好きです。(唐突)頑張ってください。 (2020年11月25日 14時) (レス) id: 79aefbbb5a (このIDを非表示/違反報告)
ラリー - 面白いんじゃあ...続きが気になって死んでまう...(訳:この作品とても好みで面白いです!更新頑張って下さい!) (2020年11月24日 22時) (レス) id: 4e3832928c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
