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全部買うなんてとんでもない。
払えない額ではないが、
たかがチョコレートにかけれる額でもない。
流石に勿体無さすぎる。
だから楽しみながら
究極に悩みに悩み抜いているのだ。
「馬鹿げたことじゃありません!
それにそんなお金もありません。
…天下のモーニングスター様と違って」
最後は皮肉たっぷりに言い放つが、
どうやら効果は全くない。
実際当の本人は、にこにこしている。
「“天下のモーニングスター様”
ふふ、いいね。
今ので一気に気分が良くなった」
片手をあげて店員さんを呼ぶ。
若いお姉さんが対応してくれるようだ。
「お嬢さん、これ全部1つずつ貰おうかな」
顔を赤らめながら彼女は数回頷いた。
1つずつ、貰おうかな…?
全部…貰おうかな…??
ドラマでもそうそう聞かない台詞が
今まさに隣に立っている人物から
飛び出してきたことで思考が停止する。
そしてまさに店員が
チョコレートを各種掴もうと
トングに手を伸ばした瞬間、
Aはようやく我にかえり
待ってください、と反対の声をあげる。
「いえ、要りません大丈夫です。
すみませんごめんなさいお邪魔しました」
そそくさとその場を去ろうとする
Aの腕をルシファーが軽く掴んで阻止する。
「お嬢さん、気にしないで。作業を続けて」
「ほんと要らないですって。
ここの商品の値段は
チョコレートの見た目とは違って
まったく可愛くないのに
それを全種分なんて意味がわかりません。
贅沢すぎます、たかがチョコレートに
そんなに払えるわけないじゃないですか」
「君にはね」
ふふ、と余裕たっぷりのルシファーとは
反対にAの顔は段々と曇っていく。
「まだ遅くないから彼女に作業の中断を
お願いしてください。何故かさっきから
ずっと貴方に見惚れてるようだし」
Aの全力のジェスチャーも虚しく
店員は着実に仕事を終わりに近づけていく。
「どうしてもわからないな、
ただ僕は君を労いたいだけなんだ。
善意は素直に受け取るものだって
教わらなかった?」
「単純に貸しをつくるのが嫌なんです。
特に貴方のような、見返りに何を要求してくるかわからないような人に」
「呆れた、
僕がそんな心の狭い男だとでも?」
「思っています、身勝手な人だとも」
腕組みをしているAを一瞥したあと
ルシファーは外にちらりと目をやり
路上駐車していた誰かの車をパニックモードにした。
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作者名:若松 | 作成日時:2021年9月28日 14時