対価 / ルシファー ページ1
刑事ヒロイン×ルシファー
(クロエの後輩設定)
ショーケースに並ぶ宝石のような
チョコレートの数々。
まさに芸術の域。
綺麗、の一言に尽きる。
貴重な休憩時間中に立ち寄った少し値が張る
チョコレート屋のショーケース前で
どれにしようかと1人片隅で思考を凝らす。
幸いにもこのショーケースは
ぐるりとドーナツ状になっており、
他のお客さんや店員たちに
迷惑をかけることなく長居できる。
このお店の戦略なのかもしれない、
さすがだ。という風に勝手に自分で納得し
また目の前のチョコレートに集中する。
にしてもここまで目移りするのも珍しい。
と、自嘲的に鼻で少し笑った瞬間、
「やあ、A刑事」
後ろから聞き慣れた英国アクセントが
聞こえてきた。しかも耳元で。
短く悲鳴を上げて後ろを見る
「ひどいな、まるで悪魔にでも見つかったみたいに。まあ、実際その通りなんだけどね」
後ろを振り返ると
にやにやと笑みを浮かべるルシファーが
1つウインクを飛ばしてきたところだった。
「いつの間に!」
驚いたせいで、いまだに心臓が
ばくばくと速く脈打つのを感じる。
「さっきからずっといたよ、
ちなみに3回も声かけた」
結果的に3回も
無視してしまったことに
少しばかり心が痛んだ。
「1人で深刻な顔してると思ったら
急ににやけ出したりするもんだから
面白くて少し観察してたんだ、ほら動画も。
刑事さんに送ってみようか」
失態だ。心を痛める必要なんてなかった。
「何勝手に…! 消してください。
先輩にそんなの見られたら引かれるじゃないですか」
ルシファーは
反論は聞こえなかったかのように
携帯をスムーズに内ポケットに入れ、
会話を再開させる。
「それにしても何をいつも以上に
真剣に悩んでいるんだい」
「…ここのチョコレートが凄く好きなので
少し買って帰りたいんですが
なかなか決められなくて」
どうせ言い争っても無駄と諦めたAは
ショーケースとまた向き合う。
最悪動画のことは後で弁解しよう。
自分の中で解決した途端、
一気にわくわくした気持ちが蘇ってくる。
「こっちのにしようかな…
ああ、でもこの新作も捨てがたい。
いやでも…うーん…」
「こんな馬鹿げたことを僕が来る前から
ずっと繰り返しているのか?」
ルシファーは心底呆れた目を
Aに向ける。
「信じられない。
全部買えば済む話じゃないか」
チョコレートに集中していた目が
非現実的な提案をしてきた悪魔を捉える。
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作者名:若松 | 作成日時:2021年9月28日 14時