これが恋だなんて信じないⅡ (ページ9)

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待ち時間ページ9

「まだ20分くらいある……」

遅刻しないようにと思って夜更かしの私が早く寝たら、起きたのはまさかの早朝。睡眠時間というのは管理できないらしい。
しょうがないから家で今度受けるオーディションの練習と、真剣乱舞祭のチケットを発券して来たのだが、それでも早く来すぎた。

なんとなく宏規くんって時間ちょうどに来そうだな、とか思いながら真剣乱舞祭の席番を確認しようとカバンからチケットの入った封筒を取りだした。

綾瀬と連番して一次選考に落ちて、しょうがないから宏規くんのファンクラブ先行で取った。こうやって使わないとファンクラブ入り続けてる意味ないよね。

「う～ん……微妙…」

FC先行だからもちろんスタンド。一応1階だけど…会場の見取り図で確認しなきゃ。

検索をかけ、座席の見取り図を拡大して自分の座席を見る。大体スタンド1階の一番後列。いわゆる真後ろが通路ということだ。客降りくるよなここ。割とステージは見やすそう。近くはないけど。

綾瀬に見取り図とチケットの席番を送って、「多分見やすいし、通路前だから」と自分の運のなさのフォローをしておいた。まあ多分「大丈夫だよ〜」で終わると思うけど。

一応通路側みたいなもんだし…宏規くん近くに来ないかなぁ。いや、髭切なんだけど。
まあでも今から実物に会うから……いや、なんかそう考えたら緊張してきた。あと約20分後には宏規くんが現れるはずだ。でも昨日玲夏さんと話したこともあるし、なんだかばつが悪い。いけないこと考えてるみたいだ。

そうだ、と思い私はポーチの中から小さな香水瓶を取りだした。「CHANEL NO.5」と書かれているそれは私のお気に入りの香水だ。もちろん親とかにもらったもの。本当はこれの後に出た「CHANEL NO.5 L'EAU」がすごく欲しいんだけど……さすがに買うことはできない。だって高いし。

私はそれを香りが強いので少しだけ耳の後ろらへんにつけた。CHANELだけあって、それはそれで歴史を感じさせる華やかでいい香りだ。鼻が敏感な私としては香水は心身にいい影響を与えてくれるものだった。

「はぁ……」

緊張してきた……あと十数分か。私は思考停止をして目の前で人の行き交う様をぼーーっと眺めることにした。