これが恋だなんて信じないⅡ (ページ27)

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個人的ファンサービスページ27

え？え？ここが持ち場なの？そんなの、偶然にしてもできすぎている。

私が1人で驚いている間にも、兄者は私から見て数メートル右ら辺の座席の後ろにあるポールの柵に両肘をついて、その上に顎をのっけたりしてニコニコしている。多分このブロックに兄者の担当カラーであるペールイエローを振っている人が多いから嬉しいんだと思うけど。でも私にはさすがに気が付かないだろう。

驚きで回らない頭で冷静になろうとそう考えているうちに、兄者は少し移動して、本当に私のほぼ目の前まで来た。私の席の方が通路より少し下がっているから見上げる形になるけど、1mほどの距離だ。大きなライブでこんなことは初めてで、胸がいつもより勢いよく動いている。

待って、宏規くんが私の方を向いていないうちに顔を背けたい。この距離なら、顔を見たらわかってしまう。

そう思っても、体に染みついた癖はこんなに近くに来ても抜けないらしい。目を、顔を背けたいのに、背けることができない。自分の意思に反して、体は目の前の兄者を、宏規くんを見つめさせてくる。

兄者は、ついにこっちを向いた。目線が、たった1mの距離で、バッチリと合う。宏規くんの大きな目はさっきよりも開かれて、明らかにあっ、というような顔をした。全く、私はなんて顔をすればいいんだ。

しょうがなく、笑顔とも苦笑いともわからぬ顔をすると、兄者は、いや、宏規くんは今までよりもっと嬉しそうに、楽しそうに笑ってから、手でハートを作った。どう考えても、私に向けてだ。

なんでわかっちゃったことを隠そうとしないんだよこの子は………！！！
あのファンサービスの手厚くない兄者が、個人に向けてファンサをするなんて只事じゃない。君はファンサの手厚い麻璃央くんじゃないんだぞ？！

同じブロックの人は気がついてしまっただろうか。左は端だからもう人がいなくて、右には綾瀬。でも私より下の席には人がたくさんいる。もう、辛い。

でも、私を見つけた途端にそんな風に笑顔になってくれたのは、すごく嬉しかったよ。