これが恋だなんて信じないⅡ (ページ36)

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どんな形でもページ36

「えっ…？」

言われた言葉の意味が、分からなかった。否、意味を考えられなかった。この言葉をそのまま受け取ったら、自分に都合がよすぎるんじゃないかと思って。

「Aちゃんはさ、最初会った時から、そんなつもりで言ってくれたわけじゃなかったと思うんやけど、えーっと、その…Aちゃんの俺に対して言ってくれる言葉の一つ一つが、俺にはすごい刺さってたし、嬉しかったのね？役者の俺ってよりも、三浦宏規っていう一人の人間を見てくれてる感じがして。あ、もちろん、役者の俺を見てくれるのも嬉しいんやけど…あーなんかもう俺何が言いたいんやろね。別に俺が役者じゃなかったら、出会ったりはしなかったと思うのに」

そのとき、脳裏に玲夏さんの言葉が蘇った。

『んーーだってさ、好きって気持ちを抑えるのってキツイもん。私たちは役者である前に一人の人間なのよ？仕事は大事だけど、こういうことも、大事にしたいなって』

普段から、自分ではない役というものを演じることを仕事にしている私たちは、役とその俳優を混同されやすい。役作りは大切だが、自分は自分と分けることも大事だ。
だから自分とか、一人の人間という言葉をよく使うのかもしれない。玲夏さんにこの言葉をかけられた時、私は玲夏さんに「好きとはなにか」って問いかけたなぁ。

玲夏さん、あの時かけられた言葉の意味が、やっと理解できたかもしれないです。

「宏規くん、私はさ、もし宏規くんと役者とファンって形で出会ってなかったとしても…同じ風に想ってたよ」

「……」

「私はね、宏規くんの言う通り、ずっと宏規くん自身を見てた。多分宏規くんが考えてる以上に。でも、それはダメなことだってずっと思ってたし、人からそんなに気にするなって言われても、受け入れられなかったんだ。宏規くんの…邪魔になるから。だけど、」

私は、遠いところを見ていた目線を宏規くんの瞳に向けた。その眼は、私が思ってるよりもずっと、不安そうに揺れている。

「今は、宏規くんがそう言ってくれたことが………泣けてくるほど嬉しい」

「！え…じゃあ」

「うん、私も好きだよ。大好き。一人の人間として」

この私が目を見て、言えた。