これが恋だなんて信じないⅡ (ページ34)

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忙しい予定ページ34

レミゼを見終わった私たちは、宏規くんが入れてくれたコーヒーを飲みながら、今後の予定やらなんやらについて話していた。一応ちゃんと家にマグカップらしきものはあって、意外と家でコーヒーとか飲むんだ…と感じた。宏規くんのことは、知らないことだらけだ。…彼のささいな新しい一面を知るだけで、想いは少しずつ大きくなってる気がする。

「紅白やって、ノスワンがあって、レミゼ？」

「うん、そうね」

「で7月に双騎があって、その後も数ヶ月レミゼ…テニミュ……お仕事の予定詰まってるなぁ」

「すごくありがたいけどね」

相変わらず、先の方まで仕事の詰まっている宏規くんは、暇というものがなさそうだ。今、こんなふうにお家にお邪魔しているのが不思議なくらいに。

「私は大体役付きじゃないけど…でも、この間初めて役もらったの！」

「えっ、おめでとうっ！」

「ありがとう〜…ほんとに嬉しかった…」

私が笑顔でしみじみ言うと、宏規くんは優しい眼をした。

「まあ、それだけだけどね！宏規くんに比べたらなんてことはないし…それに、レミゼなんて地方のときは数ヶ月帰ってこないんでしょ？…私ホームシックになりそう」

故郷でもない家でホームシックって変な気もするけど。

「そうねぇ……中々、こうやって会うこともできんくなると思うし…」

彼は至って普通の調子でそう言った。もっと言えば、どういう感情で言ったのかが分からない声で。考えたことがなかったけど、宏規くんとこういう風に会えなくなったら、

「……寂しい…ね」

「え？」

「あ……あんまり考えたことなかったんだけど、宏規くんと会えないの、寂しいなって」

思わず声に出していた。無意識じゃない。これから会えなくなるかもしれない宏規くんに、会えなくなる前に、思ったことは伝えた方がいいのかもしれない、という本能が働いたのかもしれない。

「……うん、俺も寂しいよ」

今度ははっきりと、感情の推し量れる声だった。