これが恋だなんて信じないⅡ (ページ16)

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CHANEL No.5 L'EAU ページ16

「結局、宏規くんが勧めてくれた方買っちゃった」

「ふふ、似合っとると思う」

「えへへ…ありがとう。美容部員さんもお目が高いですねって言ってたよ」

「まじ？俺そんな詳しいわけやないのになぁ。まあセンスがええから」

「あはは、言えてる。そういうとこのセンスいいよね」

奮発してんな～私。でもいいや、今幸せだもん。

宏規くんの要望により、CHANELのカウンターまで来た。CHANELのエリアで足を止めるのはわ、生まれてこの方初である。

「いつもはネットで買うんやけど、せっかく来たから～」と宏規くんは言っていた。基礎化粧品の残りが少ないらしい。宏規くんは基礎化粧品とかも全てCHANELだって聞いたことがある。どんな坊ちゃんやねんって思ったけど、顔的に似合う感じがするから恐ろしい。

やっぱりCHANELは一際高級感というか、格式の高い感じが漂っていて、カウンターにはウン万円の品々がズラっと並んでいた。思わずヒエッと小さく声を上げる。

「あっ」

私はその中から見慣れた小瓶を見つけた。「CHANEL No.5」と記されたそれの隣には中身が透明で洗練されたデザインの「CHANEL No.5 L'EAU」と記された小瓶があった。私が前々から欲しいと思っていた香水である。

もともとつけていた香水も取れかけた頃だろうと思い、シュッと首ら辺にひと吹きすると華やかなのにくどくない素敵としか言いようのない香りが広がった。本当に美しい香りだ。やっぱり欲しいな。お金貯めて買おうかな。

「おまたせ～。あ、それ好きなん？」

「あ、うん。中学の時に試供品もらって、それからずーっと好き」

お会計を済ませてきた宏規くんが背後からひょいっと顔を覗かせた。CHANELと書かれたモノトーンの紙袋を持っていてもなんの違和感もない。

「No.5……あ、ローって書いてある。今つけた？」

「え、うん。よく分かるね」

「朝と違う香りがするから」

鼻いいなと思いつつ、「L'EAU」の綴りが読めなかったんだということにきゅんとした。

「ローって確かフランス語で水って意味なんだって」

「へぇーなんかこれAちゃんみたいやね」

「はっ？どこが？」

「なんか、透明なとことか。Aちゃんって水みたいに純粋な感じするし」

どこに純粋さを感じたんだろう…と訝しげに宏規くんを見ると、「あと、華やかなええ匂いなとこ」と付け足した。何言ってるのこの子。

時々変なこと言うところも、愛しいと思えるのは私が彼を好きな証拠なんだろうな。認めたくないけど