偶然か、必然か1 ページ32
「はぁーー、今日はなんとなく上手くやれたぁ……」
「お、よかったじゃん」
「ありがとうございまーす」
「でも疲れた……」
「わかります……」
玲夏さんはあまり柔らかくない楽屋のソファに寝そべり、欠伸をしている。全く、楽屋で何たるざまか……
私の初舞台の公演は、少しずつ終わりへと近づいていた。
テニミュに行き、宏規くんたちとご飯を食べたのが1週間ほど前。
…もうそろそろ、宏規くんに会いたいなぁ、なんて。
そこまで思ってはたと気がつく。
……いや、馬鹿か。ファンなのに同業者で最近よく会えるからって最近調子乗ってんのか?は?調子に乗れるような立場なのか私は?んなわけないやん阿呆。
そんなことを考えて頭を抱えていると、誰かがトントンと扉をノックしてから「Aちゃーん、宏規が来てるよー会う?」と呼んだ。どうやらこの爽やかな声は、洸さんのようだ。
って、待てよ。宏規が来てるよー…って。
「え、え?………私行った方がいいんですか?」と困惑して、思わず玲夏さんを見る。
「えー行った方がいいでしょ。わざわざ呼んでくれたんだし、ほら!行ってきな!」
玲夏さんにバン!と背中を叩かれる。意外と痛い。って、これ前もやった気がする。
楽屋のドアをおそるおそる開けてみる。すると、宏規くんが「やっほー」とヒラヒラと手を振った。
「や、やっほー。え、宏規くん、どうしたの…?」
「いや、もちろん、観にきたんよ。そんでー」
宏規くんは1度息をついてからいたずらっ子のように笑って「ついでに、Aちゃんに会いに来たとこ」と言った。
私は一瞬思考が止まった。と、同時になんだか恥ずかしくもなってきた。何言ってるんだろうこの人。
後ろからニヤニヤしている人の気配がしてきたので、とりあえず楽屋を出て後ろ手で扉を閉めた。
1回わざとらしく咳払いしてから、「…暇人ですか?」と尋ねた。
「わりと」
少し嫌味をこめて言ったのに、何も悪びれていない表情だ。宏規くんに小さな嫌味は通じない。覚えた。
「そっか。いやなんでもないよ。あと、ありがとう。普通に嬉しい」
まさか、偶然すぎる。会いたいなぁと思って会えるなんて。
今日上手くやれたご褒美だろうか。いや、宏規くんが観てたから上手くやれたのかもしれない。どちらにせよ、宏規くんの前で失敗したりして醜態を晒さなくてよかった…
私は安堵と嬉しさから、宏規くんに見られないように隠れて少し笑った。
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ひよこまめ(プロフ) - 晴菜さん» ありがとうございます!長らく更新せずにすみませんでした……溜めていたのでバンバン更新(多分)します! (2019年10月25日 22時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています!無理せず頑張って下さい! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 木綿さん» コメントありがとうございます!最近暇なので……(本当は試験が迫っている)きまぐれ更新ですが、付き合っていただけてありがたいです (2019年10月13日 5時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
木綿 - たくさん更新嬉しいです!!続きドキドキです〜〜 (2019年10月13日 1時) (レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます!最近更新が滞っているのでどんな文句が…とビクビクしてコメント見ました笑とても暖かいお言葉、ありがとうございます。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこまめ x他1人 | 作成日時:2019年8月27日 4時