3 ページ25
まあいいや。少ししぼんだ宏規くん可愛すぎるし。
なんとなく機嫌の良くなった私はすぐ近くにあったベンチに座って、「まあ、他にもあるよ」、とまだ立ったままの宏規くんを見上げた。
「なにが？」
「感想。やっとね、心が落ち着いてきた」
「宏規くんさ、前の氷帝戦をDVDで観た時とは比べ物にならないほど、歌も演技も上手になってた。表情はもともと上手かったんだけど、磨きがかかってたし…去年からボイトレ行ってたんでしょ？…頑張ったんだろうなぁって」
「…って、私なんかにこんなこと言われても微妙かもしれないけど」と思わず笑うと、宏規くんは「そんなことないよ」と言いながら私の隣に座った。
私と宏規くんとの距離がぐっと近くなる。
はっきり言って異性に慣れていない私は自分からもここまで異性と近付くことはしない。
手を少しでもずらせば、指が当たってしまいそうな近さに、自然と胸が早鐘を打った。
きっと宏規くんにとっては普通なことなのだろう。
それが、私にとっては少し寂しい気がしてしまう。
すると、宏規くんが大きく伸びをして、「なんか心配して損した」とこっちを向いた。さっきよりも柔らかく、緊張がほぐれたような声になった。
私は少しだけ近くなった顔の距離になんとも言えず、少しだけ顔を逸らしながら「な、なんで？」と聞き返した。
「だってさぁ、Aちゃんストレートやから。今回の、少しミスったところもあったと思うし、ダメ出しとかもされるんかなって思ったの。洸も、Aちゃんの前では下手なことできん、って言ってたし」
「え゛、まあ確かに細かいところ見てるねってよく言われるけど…」
特に悪いところが。
っていうか何言ってんだあの人…確かに、前どっかの舞台の感想を言い合ってたとき、私は俳優や公式のできていないところを歯に衣着せぬ物言いでボロクソに言ってしまった覚えがある。あのとき、洸さんもあの場にいたことを思い出した。
「ふざけすぎると人間性まで否定される〜って洸笑っとったよ」
宏規くんは、ダメ出しをされたりするのが嫌いなはずだ。じゃあ、なぜ私がはっきり言う性格だと知って、感想なんか求めたんだろう。手紙とかで存分に褒めてもらえるはずだ。いや、ダメ出しばっかの手紙もたまにあるって聞くけど…
「…なんで宏規くんは私に感想を聞いたの？」
「え、なんでやろ…」
宏規くんは少し考える素振りをして、思いついたようにこっちを見ると、話し始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよこまめ(プロフ) - 晴菜さん» ありがとうございます！長らく更新せずにすみませんでした……溜めていたのでバンバン更新(多分)します！ (2019年10月25日 22時) (
レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年10月21日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 木綿さん» コメントありがとうございます！最近暇なので……(本当は試験が迫っている)きまぐれ更新ですが、付き合っていただけてありがたいです (2019年10月13日 5時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
木綿 - たくさん更新嬉しいです！！続きドキドキです〜〜 (2019年10月13日 1時) (レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます！最近更新が滞っているのでどんな文句が…とビクビクしてコメント見ました笑とても暖かいお言葉、ありがとうございます。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこまめ x他1人 | 作成日時：2019年8月27日 4時
