個性 ページ9
◇
『轟くん、体育祭大活躍だったね。』
沈黙に気まずくなったのか、彼女は思い出したかの様に突然話しかけて来た。
『私、何にも活躍できなかったからなー。』
「お前の個性なら仕方ないだろう。」
『そうだけど、やっぱり悔しいよ。お父さんがエンデヴァーなんでしょ？』
俺はその一言で、口に運ぼうとしていた蕎麦を掴んだ箸を止めた。
「……あぁ、そうだ。」
『お父さんが炎の個性なら、お母さんは氷の個性なの？』
俺はしばらく何も言えなかった。
言いたくなかった。
『ごめん。聞かれたくない事だってあるよね。』
申し訳なさそうに彼女は謝って来た。
そんな彼女の目線は俺の手元にあった。
それに気づいて自分の手を見た。
俺は震えるぐらい手を無意識に握りしめていた。
彼女は握りしめていた手を見て俺が怒りを感じている事に気付いたみたいだった。
俺は慌てて、握りしめていた手の力を抜いた。
手のひらには爪が食い込んだ跡が付いていた。
「別に。」
『そっか。でもね、ちょっと聞いてみたくって。』
彼女はどこか遠くを見つめた様に見えた。
『轟くんと私は似てるから。』
その時、小さくこう呟いた。
彼女の声は少し震えていた。
「どういう意味だ？」
『ううん、何でもない。』
そう言う彼女は、無理して明るく振舞っている様に見えた。
『そろそろ昼休みが終わっちゃう。早く教室に戻ろう。』
彼女は喋りながらもあっという間にご飯を平らげていた様で、お盆を持って立ち上がった。
俺は急いで残りの蕎麦をすすって、彼女の後に続いた。
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ゆのん(プロフ) - 感動しました。私自身、前の父親にそれに近い事をされていたので、自分の話のように感情輸入出来ました。 (3月13日 17時) (
レス) @page45 id: 9b31ba286d (このIDを非表示/違反報告)
脅威のセラフ - とても素敵な作品をありがとうございました。私は病気を患っているので勇気が出ました！ (2020年7月12日 19時) (レス) id: 285d3eca52 (このIDを非表示/違反報告)
美琴(プロフ) - お話がとても深くて素晴らしかったです！ (2020年5月10日 16時) (レス) id: 8087b8e5a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるちこ | 作成日時：2019年9月23日 0時
