幸せだった日常 ページ19
◯
あの日の事は今でも鮮明に覚えている。
幼稚園生最後の私の誕生日だった。
今日はお誕生日会だねと、私は幼稚園に行く道でお母さんに話し掛けた。
けれどお母さんの反応は無かった。
お母さん？ と私は握っていた手の力を少し強めて、お母さんの顔を覗き込んだ。
すると私の声に気づいたのか、ええ、そうねと言った。
お母さんは疲れ果てた様子だった。
そんな顔を見た事は無かった。
私は幼稚園に着くまで必死にお母さんに話し掛けていたけど、ずっと上の空だった。
数分歩くと幼稚園に着いた。
なぜか私には今日の幼稚園までの道のりが、今までで1番長かったと感じた。
幼稚園の門の前で握っていた手を離し、お母さんに手を振った。
お母さんは小さく手を振り返してくれた。
ご、め、ん、ね。
そう口パクで言った気がした。
私は幼稚園に足を踏み入れ、門に立っていた園長先生に挨拶をした。
振り返るともうお母さんの姿は無かった。
お迎えの時間になってもお母さんは迎えに来なかった。
先生が心配して家に電話を掛けたみたいだったけど、応答はなかった。
次にお父さんの勤務先に電話をした。
お父さんは仕事が終わるまで迎えに行けないから夕方まで預かって下さいと言ったみたいだった。
私は幼稚園でお絵かきをしたり、絵本を読んだりしてお父さんが迎えに来るのを待っていた。
私はなぜかその待っている時間が怖かった。
結局お父さんが迎えに来たのは6:00を過ぎていた。
お父さんは機嫌が悪そうだった。
だから家までの帰り道に私は何も聞かなかった。
家に着くと、お母さんの姿は無かった。
流石に心配になって私はお父さんに尋ねた。
すると、お父さんは冷たく出て行ったよ、もう帰ってこないと言った。
私が理由を聞いても何も教えてくれなかった。
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ゆのん(プロフ) - 感動しました。私自身、前の父親にそれに近い事をされていたので、自分の話のように感情輸入出来ました。 (3月13日 17時) (
レス) @page45 id: 9b31ba286d (このIDを非表示/違反報告)
脅威のセラフ - とても素敵な作品をありがとうございました。私は病気を患っているので勇気が出ました！ (2020年7月12日 19時) (レス) id: 285d3eca52 (このIDを非表示/違反報告)
美琴(プロフ) - お話がとても深くて素晴らしかったです！ (2020年5月10日 16時) (レス) id: 8087b8e5a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるちこ | 作成日時：2019年9月23日 0時
