86話 茜色 ページ10
「.....ん.....ここ.....は.....」
ゆっくり瞼を開けると、真っ白い天井が一面に広がっていた
「.....そうか.....わたし.....情け.....ない.....っな.....」
私の頬に温かいものが伝う
完全に負けてしまった
私が弱かったから
大切な人をまた守れなかった
『Aちゃん.....あともう少しよ、頑張って.....』
『鎧塚.....』
これは梅雨ちゃんと轟さんの声？
私に必死に呼びかけてくれていたんだね
貴方達は強いなぁ
私はもう全てから目を背けたくなっちゃった
何も見たくない
何も知りたくない
知るくらいならいっそ.....
私は剣を取り出し、自分の喉元に突きつけた
これで楽になれる.....
『血は繋がってなくとも俺の娘だからな』
どうして.....どうして思い出してしまうの.....
傷つけたくないと、生きていて欲しいとそう願っているのに
また温かい手で私を撫でてほしい
優しい言葉を私にかけてほしい.....
なんでそんな欲が今更.....！
喉元に突きつけたはずの剣は徐々に下がっていった
「.....やめてよぉ.....！思.....いだし.....たら.....」
"死ぬのを躊躇ってしまう"
「A.....ぅぁあ.....」
「あい.....ざ.....わ.....さ.....」
最後の言葉は相澤さんのうめきによってかき消された
私は剣をベットの上に放りなげてかけだす
相澤さんは私以上に包帯で巻かれ、イレイザーヘッドに必要なはずの眼は隠されていた
「ごめんなさい.....！！ごめんな.....さっ.....！」
私は相澤さんの手を握りながら、何度も何度も謝り続けた
その懺悔は、何の為にしていたかは分からない
それでも構わず、シーツを濡らし、声が枯れるほど謝り続けた
茜色に空が染まった頃
「.....A.....」
「.....！」
私の手は弱々しく、そして温かく握り返された
「.....ただいま」
「おか.....え.....りな.....さ....い.....消太さん.....」
私達2人もまた茜色に染まっていたのだった
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作者名：雪乃 Kei | 作成日時：2020年3月8日 15時
