7.運命少年(仮)。 ページ8
俺は今、何のためにここにいるんだろう。
もっと刺激的で胸が踊るような、そんな事が無いのだろうか。
……なんてことは、俺以外にみんな考えたことがあるんじゃないかと思う。
毎日が退屈で、何も面白いことがなくて
だからこの、いつも同じリズムでしか動かない胸を大きく弾ませる出来事が欲しくて────
「匠、明日朝練遅れんなよ!」
「分かってる分かってる、じゃーまた!明日!」
友人に手を振って、テニスラケットをぱたんぱたん、と鳴らす。
飛んでくる蛾を手で払い除けて街灯をぼーっと見つめる。
「今日も同じ、か……」
また明日、俺は同じことを繰り返しながら生きていく。つまらない毎日を。
諦めかけて足を進めたその時、コツン、と頭になにかが当たった気がした。
「なんだこれ?」
それは、くしゃくしゃになった紙飛行機だった。
ところどころが、黄色く日焼けしていている。
────その時俺は、少し期待をした。
この紙飛行機になにかメッセージが書いてあれば、俺は恋焦がれた非日常に巡り会えるのでは無いか、と。
無我夢中で紙飛行機を開くと、期待通り……いや、正直まさかと思っていたから予想以外と言うべきなのか。
『た す け て 二 体 1 - C 木 村 美 女』
の文字。
「きむら、み、みお……?いや、なんだこれ……?」
やはり、俺の考える非日常は幻想だったのだろうか?
紙飛行機……もとい、古びたチラシを無意識にクシャッと音が鳴るほど握りつぶすと、二体へ背を向けて歩き出す。
すると、狙ったかのようなタイミングで声が聞こえてきた。
「帰るのか?」
「だ、誰ですかあなたは……」
声のする方に体を向けると、そこには腕を組んで不敵な笑みを浮かべる男子生徒がいた。
「僕のことはどうでもいい……お前の望む非日常、あっさりと手放すのか?と聞いている。」
「いや、意味がわからないというか……」
「届ける、助けに行く、あとは……SNSに拡散する、それだけでお前のつまらない日常は変わると思うぞ?」
「本当、ですか?」
「お前の努力次第だな、ふん。僕はこれで失礼するよ。」
彼は最後まで偉そうにすると、捨て台詞を吐いてさっさと歩き出してしまった。
「助けに、行くべきなのか……?」
迷いながらも、俺の足は確実に二体へ向かっていた。
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作者名:いろはす | 作成日時:2018年4月28日 15時