6.憂鬱少女。 ページ7
「っ、っと!」
油性ペンを、くしゃくしゃの古びたチラシに走らせる。ライトが疎らに飛び散るせいか、あまり丁寧にかけていない気もする。
でも、これしか方法は、無い。
「……じゃ、あとは飛ばすだけ……!」
もう一度、寒さに震える足を奮い立たせて跳び箱に登ると、外の空気が入りこむ換気扇のあった穴を見据える。
そしてそのまま右手を後ろに引くとヒュッ、と古チラシを飛ばす。
「っ飛べ!」
小声で、だけどしっかり、紙飛行機の後押しをする。
この紙飛行機を見て、誰かが気づいてくれれば……!
いくら時間が経っただろう。
長いか短いかも分からないが、夜の冷えた空気が頬を撫でるのを合図に、私は跳び箱から降りて、ドアから少し離れた場所に体育座りをする。
スマートフォンを起動させて、時間を確認したりして暇を潰す。
自身の腕を強く抱いて、寒さに耐える。
固く目を閉じて、『その時』を待つ。
「っ、くしゅ!」
けれど、いつまで経っても『その時』は来ない。
『キャハハ、なにそれやばー!じゃ、また明日ー!』
『あはは、じゃーねー!!』
今の時間は……19:45
紙飛行機を飛ばしてから、更に1時間経過している。
運動部らしき女子生徒の声がする。
今、大声で助けを求めれば、来てくれるかもしれない。
でも、でも、出来ない。
私は臆病だから。
そんなことしても、結果がわかるから。
「……朝まで、待つ、かな」
目頭が少し熱くなって、喉の奥が疼く。
唇をきつくかんで、もう、意識を手放そうと目を閉じた時、『その時』は来た。
────カチャン
「……君、こんな時間に、こんな所で、何してるの?」
電灯の光が、冷たくてなんだか少し痛かった。
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作者名:いろはす | 作成日時:2018年4月28日 15時