2.性格少女。 ページ3
突如聞こえてきた謎の声に、私はビクリと身体を震わせて足を止めた。
たしかに今の声は、誰かに『逃げるのか?』と問いかけた。
それは私に対して?それとも、体育館にいる誰かに対して……?
でもそれきり、声は誰にも何も問いかけない。
「やっぱ、勘違い……って感じだよね」
私は再び足を動かした。
早く家に帰ろう。
あったかいお風呂に入って、美味しいココアでも飲んで、今日のことは忘れよう。
そう思って走ろうとした次の瞬間、一際大きくなった声が、今度は私だけに問いかけてきた。
『だから、逃げるのか?ときいている。1年C組木村美女、お前だ』
名指しされて私はその場に硬直した。
返事こそしなかったものの、背中に嫌な汗をかく。
えっなんで、この人、私の名前知ってるの?
なんで、私を呼び止めるの?
ない頭を必死に働かせていると、唐突に誰かに腕を強くひかれた。
「えっ!?」
掴まれた左腕を凝視すると、私より一回りも大きいのに、白くて滑らかで美しい手が見えた。
明らかに質は女性より遥かに優れている。
でも、力は男性とほぼ同じだ、掴まれている左手がキリキリと痛む。
「えっ、痛っ……ちょ、ちょっと!離して……!」
大きな力に引きずられるようにして、私は体育館の中に無理やりだが足を踏み入れる。
つん、と木の匂いが鼻をつく。
よく見ると、想像していた体育館とは違う。
誰もいない。
「随分と地味な雰囲気を持つ者だな、木村美女」
「……誰、あなたは」
「僕は牛島司、君の人生を変える人間さ。そして君は、僕に、選ばれた人間だ」
そこに居たのは、メガホンを片手に不敵な笑みを浮かべる『牛島司』と名乗る男子生徒だった。
「牛島、司……」
これが、私と彼の最初の出会いだった。
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作者名:いろはす | 作成日時:2018年4月28日 15時