緑の風を追って (ページ29)

今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:34,525 hit

27話ページ29

私はハクと共に
部屋に入ると変わり果てたジェハの姿があった

幻覚でも見ているのか酷く暴れていて
そのせいか床に引っ掻いたような傷があるのが目に留まる

「何をする気だ?シオン」
ハクの心配そうな声が聞こえる
けど、大丈夫。今の私ならできる。
私はゆっくりと暴れてるジェハに近付く
「ちょっ、シオン!危ねェぞ!!」
ハクの焦った声が聞こえる
けれど、そんなのお構い無しだ

私はジェハの傍に近付くと
ぎゅっと体を抱き締めた。
そうすることでジェハは離れようと
余計に暴れるが今、離れる訳にはいかない
「ジェハ、助けてあげるから」
私は優しく声かけると
ジェハの額と私の額をコツンとくっつける

「大丈夫だよ。安心して眠ってね」

私はジェハの苦しみを和らげる為に
そっと、溢れる力を注ぎ込む
すると
私とジェハを中心としてブワッと
風が巻き起こった。
髪留めが外れて髪が風に棚引く

私は自分でやってることなのに
何が何だか全く分からない

「ん‥‥‥‥‥」
ジェハは楽になったようで
だんだん落ち着きを取り戻してきた
もう、いいかな‥‥?
私かジェハから離れると
スウ‥と風も収まっていく

ジェハの顔色を見ると今はもう
すやすやと眠りについていた

「シオン今のは‥?」
困惑するハクをよそにバンッと扉が開け放たれる
びくっそれに反応して私の体も震えた
「ハク!シオン!
ごめんなさい!一体何が起きてるの!?」
「それが、私にも分からな‥‥」
立ち上がろうとするが
脚に力が入らない。
それどころか今まで感じたことのない
疲労感に襲われ体の力がぬけていく
ああ‥‥何だか凄く、眠い‥

「シオン!?」

「シオンッ!!」

皆が私の名を呼ぶ声がするけど
それもだんだんと遠くなっていった。