邪な要求(3) ページ7
*
一通り話を終えて、総悟くんの顔色を伺ってみる。
しかし彼は俯いたままで。
その手には力強い握り拳が作られていた。
「…気に食わねェ。土方もアンタも」
「えーー」
ぼそりと呟いた彼の言葉を聞き返すと、力強い指先が私の腕を拘束した。
そのまま勢い良く壁際に追いやられ、彼の紅い瞳が私の瞳を貫く。
「そんな薄っぺらいお願いで俺が黙ってるとでも思ってるんですかィ?」
「そ、総悟くん…?」
甘いなァ、アンタ。
だんだんと近づいてくる端整な彼の顔。
その瞳の奥には、真っ黒な欲望が垣間見える。
なんとか打破しようと試みても男の力には到底敵わなかった。
「アンタらの思い出話なんざ興味もないんでねィ。この話を土方のヤローに打ち明けたら、きっとアンタとの関係も一瞬で海の藻屑でさァ」
「そんな…!」
満面の笑みで怖いことを言ってのけるその姿からは恐怖しか感じない。
どうすればーーー
「まァ、百歩譲ってアンタが俺の言うことをなんでも聞くってんなら…考えてあげても良いですぜィ」
混乱下の状況で耳元で囁かれたその要求。
その後すぐさま白い指が私の首や鎖骨をそっとなぞる。
はだけた襟元にすっと手が入り、危機感が募る。
「聞くわ!聞くから離して総悟くん!!」
ええい、どうにでもなれ!
やけくそ半分で、とりあえず彼の要求を飲むことを判断。
すると総悟くんは満足したようにニヤリと口角を上げ、解放する。
すぐに乱れた襟元を正し防御体制に入ると、彼は嘲笑うように鼻で笑ってみせた。
「心配しなくてもアンタ程度の女を襲おうなんて思ってやせん。女に困ってねェし、自意識過剰もいいところでさァ」
「なっ…」
「精々俺を楽しませてくだせェ」
身を翻した後、愉しげな言葉を置いてそのままその背中は遠ざかっていく。
そんな彼が去り際に見せた瞳は、先ほどよりももっと醜い痴態の欲が宿っていた気がする。
「怖かった…」
私より年下で、トシの部下で、真選組の一番隊隊長でーー
あんな可愛らしい顔をした子が、あんな怖い顔をするなんて思ってもみなかった。
その場に座り込み、自分の体をぎゅっと抱き締めながら、今後の行く末に不安を感じるのだった。
「 邪な要求 」
(こんなこと誰にも相談出来ないよ…)
209人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミウラ(プロフ) - 今までにない感じのお話で、話の進め方とかお話の書き方とかすごく好きです!これからもずっと応援してます (2021年2月1日 21時) (レス) id: d74a655a97 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - あくび少女さん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。ドロっとしてますか?沖田の腹黒健在とのことで、原作の世界観を壊してませんでしょうか…!カッコいいとのお言葉いただけて嬉しいです。今後とも精進いたしますので、よろしくお願いします。 (2019年8月10日 1時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
あくび少女 - こういう少しドロッとしてる話、大好きです!しかも、沖田がゲスなのにかっこいい!更新頑張ってください (2019年8月9日 21時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蝶遊さん» 初めまして、宇治と申します。お気遣いのお言葉、とても嬉しいです。ありがとうございます。総悟の言動を掴めていると思っても良いのでしょうか…!!この調子で執筆していければいいなと思っています。ありがとうございました! (2019年4月14日 16時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
蝶遊(プロフ) - コメント失礼します。沖田さんらしい言動や言葉遣いとても素敵です…!無理なさらなずに更新頑張ってください、応援してます! (2019年4月12日 19時) (レス) id: 845216b1cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2019年2月2日 22時