恋人ごっこ【凪誠士郎】

▫️めんどくさい感情 - 2 ページ5

*



「…それってAのこと？」


今思えば俺が知ってるやつなんてレオとAしかいないし、考えるってほどでもなかった。

当てずっぽうで聞いてみると、レオの顔がみるみると赤くなっていく。



「…レオってAのこと好きなの？」

「違うって！なんでそんな解釈になるんだよ！！」

「ーーあ、Aだ」


少し先を歩くAの姿を見かけてレオに教えてやると、大きく肩を揺らし慌てて俺の背後に隠れる。

複数人で笑いながら角を曲がったAの様子を見届けた後、しばし訪れる沈黙と共にじーっとレオの顔を眺める。



「ーーああ！そうだよ！！Aが好きだよ！！悪いか！」


俺の視線に観念したのか、センター分けの髪を掻き乱し、更に頬を朱に染めていく。

御曹司でも照れるなんてことがあるのか…
お金持ちなのに。なんでも手に入りそうなのに。



「…俺じゃなくてAと一緒に帰ったら？」

「そんな簡単に誘えねぇよ」

「ふーん。めんどくさいね」

「うるせぇ」

「うぇ…痛い」


軽いデコピンを前髪越しに喰らい、口を尖らせてレオに痛みを訴える。


ーー昼休みの時、俺に用があるって言いながら、実はAのこと気になってたんじゃ。

わざわざ俺のクラスに来たのも、俺と一緒に帰るのを口実に本当はAを探してたんじゃ。


ーーめんどくさいことになりそうだから黙っておこ。




「 めんどくさい感情 」
(自由気ままに生きれれば、俺はそれでいい)

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