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決して離れないようにいつの間にか触手からただ一つの個体となった無惨様を強く抱きしめ、落ちていくと、下に辿り着いた。
目の前にはどこか迷子になったかのような無惨様の顔があった。
「椿姫…。」
「今は、何も言わなくていい。私はずっと一緒にいるから。私が少しずつ教えてあげる。誰かを失う悲しみ、永遠ではない事の尊さ、生きていることの素晴らしさ。
一緒に考えて歩いて行こう。無惨様。」
「…。」
返事はなかったけれど、私の話が伝わったのが分かった。
私は無惨様の手を引いて立ち上がった。
歩き出そうとしたとき、誰かが私の頭を撫でた。
ずっと覚えている懐かしい感触。温かい手。大きな手。私を守ってくれた手。
後ろを振り向くがもちろん、そこには誰もいなかった。
「…お兄ちゃん。私をお兄ちゃんの妹にしてくれてありがとうございました。
すごくすごく幸せでした。」
私は深く深くお辞儀をした。
「止まってごめんね。無惨様。行こう。」
私たちはまっすぐと前を見ながら、暗闇へ向かって歩き出した。
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作者名:ひめつばさ | 作成日時:2020年11月1日 13時