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少し遅れてしまったが、なんとか待ち合わせの店に着きドアを開ける。
店の奥の方にこちらに背を向けて座っているユウヤを見つける。
・・・手が震える。
ユウヤに向かって歩いて行くと誰かと電話で話していた。
「—————だからぁ、Aにバレちゃったんだって。まぁ今までバレなかったのが不思議なくらいだけど(笑)だってあいつ仕事ばっかで他の事見えてねーの」
足も震える。動悸も。また逃げたくなった。
でも、ここで逃げたらまたおんなじ事の繰り返し。
ちゃんと話さなきゃ。
「もうすぐAくるから、じゃあな」
「ユウヤ・・・」後ろから声をかけて席につく。
「あぁ。話って？Aいつ帰ってくるの？」
私があんな場面を見てなんで戻ってくると思うんだろう。
「もう帰らないよ。終わりにしたいの。」「あのさぁ！」
ユウヤが苛立ったように
「家を早く出るのも遅く帰ってくるのもお前の仕事の都合だろ？俺の飯誰が作んの？用意もしないで。あの家出てくのもお前の都合だろ？家賃誰が払うんだよ」
「仕事が忙しいのわかって一緒に住もうと言ってくれたんじゃないの？家賃は今月までは振込むから」
「あっそ。今だから言わせてもらうけどさぁ、お前変に真面目で面白くないのよ。一人暮らししてた時は掃除も洗濯も料理もしに来てたから一緒に住んだら楽かなーって思って。そこそこ美人だから連れて歩くのも良かったし？でもそれだけ。何？俺に愛されてるとか結婚出来るとか思ってた？」
ニヤニヤ笑いながら話すユウヤに、何も言えなかった。
私はユウヤのどこに惹かれて4年もの時間を無駄にしたんだろう。私なりに愛していたつもりだった。それも届かず、
ショックだった。それなりに上手くいっていた時もあったのに。仕事が忙しくなっても時間を見つけては掃除も洗濯もしていた。食事は作れなかったけれど。ユウヤが少しそっけないのも気づいてはいた。誰かとしょっちゅう連絡していた事も。見て見ぬふりをしていた私が悪いのだ。
「とにかく、これで終わりにしたい。忙しくていろんな事出来なくてごめんなさい」
「あぁ。あ、お前の荷物もういらないよな？こっちで売るなり処分するから」
「うん。これ、鍵」
「じゃーな！」
そのままユウヤは出て行った。
・・・しばらく席を立てなかった。足が、手が震えて。
なんて惨めなんだろう。情けない。文句も言えなかった。
ぐちゃぐちゃの感情でどうしようもなかったが、呼吸を整えてとりあえず店を出た。
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作者名：kazu | 作成日時：2023年2月8日 16時
